解散命令の決定プロセスはブラックボックス
家庭連合の解散命令請求に関する報道が盛んに行われています。松野官房長官や永岡文部科学省大臣が、解散命令請求はまだ決まったことではないと発言していますが、報道機関に情報を意図的にリークしているのですから、政府としては解散命令請求に踏み切るのだろうと、私は思います。
この解散命令は、初めから最後まで、重要なポイントが全てブラックボックスです。ポイントを下記します。
①岸田首相の解散命令請求の要件変更
岸田首相は、2022年10月19日に、解散命令請求の要件を、一晩でひっくり返しました。すなわち、前日までは代表者等の刑事事件を必要条件とした過去の裁判所の見解を踏襲していたのに、突如民事事件を要件として追加したのです。
これほどの重要な判断を、誰がどのように決めたのか、国民には一切知らされていません。最終的には岸田首相が判断したのでしょうが、首相の一存で決められる事項ではありません。
②解散命令請求を前提とした質問権の行使
7回も行われた質問権ですが、行使については、宗教法人審議会の意見を聞くこととなっています。ところが、この議事録は一切公開されていません。文化庁のホームページは、宗教法人法審議会の議事録は毎回公開されていますが、その更新が昨年11月で止まっているのです。昨年12月以降、質問権は7回も行使されたというのに、それについてどのような議論がなされたのか、完全に伏せられています。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/shukyohojin/
③裁判所による解散命令の決定
裁判所による解散命令の決定は、訴訟事件ではなく非訟事件ですから、裁判は判決ではなく決定で行われます。
口頭弁論は行われませんから、裁判は当事者を交えずに裁判所の中だけで非公開で行われます。口頭弁論が開かれれば、信者は傍聴できるし、被告は自らの主張をして証拠を提出することもできます。しかし口頭弁論が開かれない決定では、それができません。「解散命令請求が出されても、裁判で戦えばいい」と言っている方もいますが、そんな機会はなく、裁判所の中だけで決定されてしまいます。
つまり、解散命令に至る一連のプロセスは、信者が反論したり国民がチェックすることができず、全部ブラックボックスなのです。③については、裁判所の問題ではなく宗教法人法の不備すなわち立法の問題ですが、それだけに、裁判所が示した解散命令請求の要件、すなわち「代表者の刑事事件」は重要なのです。それが崩された時点で、信教の自由の侵害リスクが高まり、ついに日本全体が全体主義的な方向に動き出してしまいました。
一部には、文部科学省の担当者が「ルビコン側を渡ってしまった」と言ったと伝えられます。つまり、今更後戻りできないと言っているわけです。首相、大臣から末端の官僚まで、保身に汲々としているようでは、日本の民主主義は、風前の灯火であると言わざるを得ません。