宗教法人の解散命令請求に関する事項は、宗教法人審議会の権限外

2023年10月13日に文部科学省が行った解散命令請求については、その前日に宗教法人審議会が開催され、全会一致で承認されたと、当時の盛山文部科学大臣が発表しています。これは新聞などでも報道され周知の事実となっていますが、そもそも解散命令請求に関する事項は宗教法人審議会の権限の範囲外になっており、宗教法人審議会は解散命令請求に対しては、意見を述べることはできないはずです。
それをあえて、文部科学省が宗教法人審議会を招集し、意見を延べさせたのは、法令違反ではないでしょうか。

まず盛山文部科学大臣が2023年10月12日に行った記者会見の発言は、下記の通りです。
「先ほど宗教法人審議会が終了し、宗教法人世界平和統一家庭連合に対し、解散命令請求を行うことについて、解散命令は相当であるとの全会一致のご意見でありました。」
https://youtu.be/miO1QmvpaRQ?si=iqAJ8n8-wL6dk0su&t=11

しかし、先ほど書いたように、宗教法人審議会の権限は宗教法人法に明記されていて、解散命令請求に関する事項は範囲外となっています。
これについて宗教法人法を見てみたいと思います。

第七十一条 文部科学省に宗教法人審議会を置く。
2 宗教法人審議会は、この法律の規定によりその権限に属させられた事項を処理する。
3 宗教法人審議会は、所轄庁がこの法律の規定による権限(前項に規定する事項に係るものに限る。)を行使するに際し留意すべき事項に関し、文部科学大臣に意見を述べることができる。
https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000126#Mp-Ch_8

そして、解散命令については、宗教法人審議会の権限とはされていないのです。
宗教法人法第81条が解散命令請求に関する条文ですが、「宗教法人審議会」の文言は、どこにも登場しません。
https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000126#Mp-Ch_9

ちなみに、宗教法人法において、宗教法人審議会の権限とされている事項は、下記の5つです。
①第十四条(規則の認証)第3項 第1項で定める、所轄庁はが認証の申請を受理した場合において、その規則を認証することができない旨の決定を行う時。
②第七十七条 この章に規定するものを除くほか、宗教法人審議会の議事の手続その他その運営に関し必要な事項。
③第七十八条の二(報告及び質問)に関する事項
④第八十条の二(審査請求の手続における諮問等)
⑤付則抄 第24項 第23項(公益事業以外の事業を行わない場合であつて、その一会計年度の収入の額が寡少である額として文部科学大臣が定める額の範囲内にあるとして当該会計年度に係る収支計算書を作成しない)場合の額の範囲を定める場合

また、2023年12月に施行された、「特定不法行為等被害者特例法」(特定不法行為等に係る被害者の迅速かつ円滑な救済に資するための日本司法支援センターの業務の特例並びに宗教法人による財産の処分及び管理の特例に関する法律)には、宗教法人法71条に対する特例を設け、指定宗教法人を指定する際に、宗教法人審議会の意見を求めることとしています。
第十五条(宗教法人審議会の所掌事務の特例)
宗教法人審議会は、宗教法人法第七十一条第二項に規定する事項のほか、この章の規定によりその権限に属させられた事項を処理する。
https://laws.e-gov.go.jp/law/505AC1000000089#Mp-Ch_3-Se_4

繰り返しになりますが、宗教法人審議会の権限は、宗教法人法第71条第2項に明記されており、文部科学大臣が宗教法人審議会に意見を求めることができる事項はその範囲に限られている以上、宗教法人審議会の権限でない解散命令請求に対して、宗教法人議会を招集し、その意見を求めることは、法令違反であると思います。

動画はこちら
https://youtu.be/64X1wbFLw6A