東京電力株主代表訴訟 控訴審棄却について
東京電力の元経営者に対して、13兆円の損害賠償を命じた、2022年7月13日の東京地裁の判決に対し、2025年6月6日に、東京高等裁判所は、控訴審で棄却しました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD027AR0S5A600C2000000
13兆円の損害賠償請求の一部を認めたというのではなく、全部棄却したのですから、大逆転といったところです。
この訴訟は、株主代表訴訟として、株主が会社に対して経営者個人を訴えるように訴訟を起こしたものです。当時は、経営者個人に対して13兆円という現実離れした損害賠償請求に、驚いたものです。
これについて、しんぶん赤旗が記事を書いています。
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik22/2022-07-16/2022071602_01_0.html
また、この判決のタイミングは、安倍元首相の暗殺事件から1週間も経っていない時でしたが、当時注目を浴び始めた紀藤正樹弁護士が、「人生最高額の勝訴」とツイートしたことを、新聞が報じています。https://www.chunichi.co.jp/article/507470#:~:text=%E3%81%93%E3%81%AE%E6%97%A5%E3%80%81%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E9%9B%BB%E5%8A%9B%E7%A6%8F%E5%B3%B6,%E5%85%86%E5%86%86%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%83%84%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%83%88%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82
実際は、紀藤弁護士は170人からなる弁護団の一人であっただけのようですが、注目を浴びたことは間違いありません。
この裁判のポイントは、国の調査研究機関である地震調査研究推進本部が試算した「15.7m」という津波に対して、東京電力が対応をしなかったのは、経営者の責任であるかどうか、ということでした。
私は、「福島原子力事故調査報告書」(2014年6月)を読んでみました。東京電力のHPに公開されていますので、ご興味のある方は、ご覧になってください。
https://www.tepco.co.jp/cc/press/betu12_j/images/120620j0303.pdf
技術的なことが多く、難解ですが、この「15.7m」というのは、当時としては極端な条件を設定した、あくまで議論のための「試算」でしかなく、そのような地震を想定して原子炉を止めて対処すべきという国の指導があったわけでもないようです。東日本大震災では、その試算条件をもはるかに超える厳しいもので、地震のエネルギーも試算時はマグニチュード8.3が、実際はマグニチュード9、しかも複数の震源があったというもので、誰もそのような可能性すら考えることはできませんでした。
福島第一原発の建設時の想定は5m程度、安全上の余裕を持たせて海抜10mの場所に原子炉を建設しましたが、津波は13mあったそうですが、これも後付けの話です。これらのことが、P32にまとめとして書いてあります。
想定をはるかに超えた震災に対する、被害者の方々、影響を受けた地元の方がたの感情的な思いは、想像してあまりあるものがありますが、だからと言って誰かに責任を取らせることは、非常に困難なことなのだと、思います。
むしろ、責任問題と言えば、事故当時の官邸、なかんずく菅総理の対応には、非常に大きな問題があったと思います。
事故が起きたのは3月11日で、その当時の最優先事項は、原子炉を冷却することでした。
そのためには、水を注入する必要がありますが、地震で水道が止まっているため、貯水していた淡水が無くなれば、海水を注入する他ありません。そこで、消防車などを使って、海水を注入することになりました。当時の現場の責任者である吉田所長が、東電本社の事件対策本部、即ち清水社長に確認を取り、3月12日には海江田経済産業大臣が注水命令を出したにも関わらず、海水注水に待ったをかけたのが、菅総理でした。菅総理は、なんと海水を注入すると再臨界、つまり核反応が再び始まると思いこんでしまったのです。そんなことはあり得ないと東電関係者は皆思っても、原子力の知識がない菅総理は、納得せず、東電本社は現場にストップをかけます。結局吉田所長が現場判断で、海水注水を進めました。もしこれがなかったら、もっと大きな被害が発生していたことでしょう。これも、P133に当時の経緯が書かれているので、よろしければご参照下さい。
ここにおいて私が思うことは、現場でしか判断できないことについては、トップは細かい指示を出すべきではないということ、また東電の経営責任を問うというのであれば、このような総理の無知と無謀を止めようとした経営者の必死な努力を、もっと世に問うべきだということです。
私は、東日本大震災及び福島原発により被災し被害を負われた方々は、本当にご苦労されたと思います。ただ、このことを教訓にしながら、安全に原子力を再稼働させることが、日本にとっては必要なことだと思います。生成AIやEVの成長により、今後電力需要は爆発的に増えると想定されていて、もはや化石燃料だけではどうにもなりません。再生エネルギーはもとよりベース電源にはなり得ませんから、やはり原子力に頼らざるを得ません。
原子力業界は非常に厳しい批判の目に晒されてきたと思いますが、是非原子力の安全な灯が灯ることを期待するものです。
動画はこちら
https://youtu.be/CMWcLYHOPI0


