勝利する人

文孝進氏は、1962年に文鮮明師の長男として生まれました。「勝利する人」は、文孝進氏が1984年に書いた詩集です。

文孝進氏は1984年に世界原研会長に就任、1985年には東京で第2回世界原研大会が開催されましたが、その際の講演も収録されています。スピーチの内容は素晴らしいものでした。下記に一部を引用します。

「第二次世界大戦後40年、人類は今やこうした一大分岐点に差し掛かっております。ではこの混乱と危機の本質的原因は何でしょうか。それは真の価値観の不在にあります。既成の国家と民族、人種と宗教、主義を超越した絶対的価値観の定立がなくては、こうした危機を解決できないということなのです。そして、絶対的価値観は永遠不変の絶対的愛を根本として立てられなければなりません。そうした絶対的愛を中心とした価値観を立てるためには、絶対的な愛の主体が必要です。その存在がすなわち神です。結局、人間の不幸は神様の愛、神様の理想、神様の願いを喪失してしまったことに原因があると言わざるを得ません。」

1985年と言えば、ソ連が力を強めて共産主義が拡大し、アメリカがベトナム戦争に敗北して以降モラルが退廃して世の中が乱れていた時期です。そのような中で文孝進氏は、神を中心とした絶対的価値観という思想を堂々と語ったのです。私もその場におりましたが、とても感動的でした。

文孝進氏は、子供の頃から韓国人という人種差別を受け、文鮮明師の息子として嘲笑されてきました。大変な少年期を過ごす中で、親に反発したことも少なくなかったそうですが、1984年に弟の文興進氏が亡くなることで、自分自身の姿勢を見つめ直すこととなりました。そして、文鮮明師の思想を実現するために、自分が世界の若者たちのリーダーとならなければならないと自覚し、世界原研会長に就任したのです。私たちは、そんな姿に、心から感動しました。

文孝進氏は、その後ご家庭の混乱など様々な困難を通過されましたが、一貫して文鮮明師、韓鶴子総裁に対する孝行心を失いませんでした。そして残念なことに、2008年に45歳という若さで逝去しました。

私は、学生時代に出会った文孝進氏の姿を忘れることができません。今でも文孝進氏を懐かしみ、思い起こします。私と同じ年代の方は、同じような思いを持っている方は少なくないのではないかと思います。