出世を急がぬ男たち

エッセイストの小島直記が、筋を通して生きる男たちの生きざまを紹介する、「男たち」シリーズを、ある方から紹介されて、読んでみました。

出世や栄誉よりも、自分の信念に対して正直な「男たち」は、かっこいいな、と思います。

その中で、田中義一と伊藤博文のエピソードが印象的でした。
田中義一は、陸軍大臣から総理大臣になった人物ですが、日露開戦前夜の明治34年、当時38歳で陸軍少佐であった田中は、元総理大臣の60歳の元老伊藤博文と、ペテルブルグで会います。地道な調査により、当時世界最強と言われていたロシアの陸軍が内実は崩壊していることを知った田中は、日露の国力を比較して日露開戦を回避すべしと考える伊藤に対して、開戦に踏み切るべしと正々堂々と論じます。
伊藤は、「青二才の書生論は聞かぬ」と断じますが、実際はその意見を取り入れ、終戦後のあっせんを米国に根回しするなど対策を講じます。

身分を越えてきちんと意見を述べ、それが正しいと考えればそれを取り入れる「男たち」は、やっぱりかっこいいな、と思いました。