新宗教と政治と金

宗教学者の島田裕己氏の著書で、戦後広がった新宗教、即ち創価学会、成長の家、天理教、ひとのみち教団(PL教団)、立正佼成会、真如苑、そして統一教会(現家庭連合)について、主に政治との関わり方や、献金などについて、書いた本です。発行は2022年10月で、冒頭で安倍晋三元首相の狙撃事件から始まる、政治と宗教、資金の問題に、世間から大きな注目を上げたことが、この本のテーマとなったことを述べています。それぞれの新宗教の考え方や政治に対する関わり方、献金などについて、根拠を上げながら整理していて、とても参考になります。

この本の一つのテーマは政教分離で、そもそも政治と宗教は分けられるべきなのかと問題提起しています。戦前、国家が神道を「国家の宗祀」とし、政治に利用したことへの反省から、戦後になって神道は一般の宗教法人に格下げされました。それ以降、政教分離が正しい方向とされていますが、創価学会が公明党を通して政治に参加しているように、宗教団体が政治を志向することが否定されているわけではありません。むしろ、世界的には、その国ごとの歴史的な背景により、政治と宗教を分離することが不可能な場合もあります。

日本人の宗教に関する考え方として、「自分は無宗教である」と言う人が多いですが、実際は大多数が信教か仏教が背景にあり、冠婚葬祭はもとより、七五三や墓参りなど、日本人は日常的に宗教行為にかかわっており、日本人は無宗教ではないと書いています。

本書を通して、筆者が宗教全般に対して好意的な視点を持っていることがわかります。統一教会に対しては批判的なご意見を持っているようですが、それも含めて公平な視点を持った本であると思います。