法学の基礎理論
先日、信者の人権を守る二世の会主催のシンポジウムに登壇された、杉原誠四郎氏が書いた著書(以下、本書)です。杉原氏のシンポジウムでのご講演(以下、講演)は、残念ながら時間切れで、途中で終わってしまいました。全体を通して論じておられた内容を知りたいと思い、講演の中で紹介された本書を買って読んでみました。
本書は、50年前の1973年の発行ですが、文字通り法学の基礎的なことが説明されており、現在でも十分通用する立派な本です。
講演の中で杉原氏は、西洋の法治主義と東洋の法治主義は、その由来が違うと、述べていましたが、それは本書で論じられていました。東洋では、法は皇帝などの権力者が人民を統治するために利用しました。しかし西洋では、法の目的は「人民の日常の生活における秩序をいかに維持するかということを眼目とし、その日常生活の中において何が正義であるかを考えながら、何ができることであり、何がなされなければならないかを客観化したとき法が生成する」(P33)と論じています。目的が違うのです。
その上で、講演では罪刑法定主義について触れていました。「法律なければ刑罰なし」ということですが、それは単に犯罪者の保護だけを目的としているのではありません。そもそも「何人も他者を法的に根拠なく不利益をあたえることはできず」(P165)、従って「あらかじめ何が犯罪であり、何が犯罪でないかを、犯罪を犯す前に、社会の構成員に周知せしめておく必要があり」(P165)、ここから犯罪に関する法の不遡及の原則、すなわち「犯罪を定める法律が制定される以前に遡って効力を発してはならないという原則」(P214)が導き出されます。
講演では、家庭連合の解散命令請求に関し、今年1月に発効した被害者救済法に触れていました。世論では、この法律を作ることで、家庭連合を一気に解散に持ち込めると誤解しているようにも見えるが、それは間違いであると杉原氏は主張します。それは、不遡及の原則によるものです。
法律の根本的な視点でのお話しでしたから、15分で論ずるのは無理があったかもしれません。法学の基礎理論に基づいて、政府の解散命令請求を分析すると、他にもいろいろな論点が見つかりそうです。講演の内容はとても深く、学びの多いものでした。改めまして、ご講演ありがとうございました。