同性婚法制化の問題(1)

同性婚を認めないことは違憲であるという判決が相次いでいます。(2023年3月17日札幌地裁、2023年5月30日名古屋地裁など)
これは、日本の家族法のみならず、戸籍制度をも揺るがす大きな問題だと思います。

日本の伝統的な家族観は異性婚であり、これは子供が生まれることを前提にしています。もちろん子供を作るかどうかは、当事者の判断であって、他人が口を差し挟む問題ではありません。しかし子供が生まれた場合、親が子を育てて成人させるために、家族を保護し、子を守るというのが、現在の民法の家族法(民法725条以降)の考え方です。

親は子に対する親権を持つと同時に、子に対する扶養の義務を負います。親が死亡すれば、子は第一順位の相続権を得ます。これらの権利義務の法的効力は強力で、意思表示がなくとも当然に発生します。
そのため、夫、妻、親、子などの、家族の構成員としての身分は、戸籍で外形的に判断するようになっています。内縁関係は、戸籍に登録されないため、外形的に判断することができません。だから内縁関係の夫婦には、相続権は発生せず、扶養の義務もありません。法律婚の夫婦関係が破綻していて、事実婚の夫婦が愛し合っていたとしても、法律婚の夫婦が法的には保護されるようになっています。

同性婚の場合は、生物的に子供は生まれません。同性婚が事実婚であれば、内縁関係と同じなので、法律的な問題は発生しませんが、法律婚にしたとたんに、法律関係が問題になります。親子関係について考えれば、生物学的には子供が生まれないので、子供は養子のみということになります。女性同士の同性婚の場合は他人から精子をもらって人工授精、男性同士の場合は代理母による出産など、実子とする方法はあるのかもしれませんが、倫理的な問題が残ります。また、両親が異性婚であれば、子に知られずに戸籍上の実子とすることもできるかもしれませんが、両親が同性婚で戸籍上実子とした場合、子にはそのことがわかります。そうすると、自分は誰の子なのかということになり、子の福祉上の問題にもなるかもしれません。

今回の違憲判決の趣旨は、憲法24条第2項に、「配偶者の選択…は両性の本質的平等に立脚」と第14条の「性別…により差別されない」を組み合わせて、配偶者が異性でなければならないという民法の規定が差別にあたるため憲法違反である、としているわけですが、家族が子を育み次世代に繋ぐという、民法の家族法の重要な観点がすっぽり抜け落ちています。これも、憲法24条に、世界人権宣言第16条第3項に規定されている、家族保護条項が抜けていることが、原因の一つだと思います。

個人主義だけでは、日本の未来を語ることはできません。今回LGBT理解増進法が制定されましたが、これは同性婚法制化への道筋を作ったものとも言えます。女子トイレ問題が大きく取り上げられており、それも重要ではありますが、伝統的な家族観が崩れてしまう危険性は、より深刻であると私は思います。

日本の未来、私たちの後孫が繁栄できるよう努力するのが、今の世代を担う我々の責務ではないでしょうか。