永遠平和のために

純粋理性批判などの著者であるカントの、晩年の著作です。
近代の文化は、ルネサンスを起点とする人文主義と、宗教改革を起点とする神主義の二つの流れがあり、それを哲学的にまとめたのがカントです。そしてカントは、単なる観念論に留まらず、国家のあり方についても本書で述べているのです。

カントがあげた原則は、次の3点です。すなわち、①国家は国民の代表による共和制であること、②国家と国家の関係は連合制であるべきこと、③国民は自由にどの国家でも行き来できる世界市民であるべきこと、です。
この本が出版された1795年から150年を経て、実際に国際連合が設立されたことを考えると、カントが如何に先見の明がある人物であったかがわかります。

しかし、カントの世界平和論は、あくまで理想論であって、現実には国際連合が世界中から紛争をなくすことなどできていないし、核兵器の開発によって、人類の危機が当時よりむしろ深刻化しているとも言えます。

それでも、カントがこの本の最後に書いた言葉は、彼の信念でもあるし、私たちも心に留めておくべきと思います。
「さて、地球上の諸民族の間にいったんあまねく行き渡った共同体は、地上の一つの場所で生じた法の侵害がすべての場所で感じとられるまで発展を遂げたのであるから、世界市民法の理念は、もはや空想的で誇張された法の考え方ではなく、公的な人類法一般のために、したがってまた永遠平和のために、国法や国際法に書かれていない法典を補足するものとして必要なのであって、ひとびとはこうした条件の下においてのみ、永遠平和にむけてたえず前進しつつあると誇る事ができるのである。」

世界平和は、人類の見果てぬ夢かもしれません。しかし、One Family under God、神の下の一家族という理想を、私たちは追い続けていきたいと思います。