解散命令請求に伴う財産保全立法
全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)は、政府または各政党に対し、裁判所に宗教法人法第81条1項に基づき宗教法人の解散命令が請求された場合に、裁判所が対象宗教法人の財産を管理し、保全することを可能とする特別措置法案(以下、法案)を提出し、今国会中に成立させるよう求めるという声明(以下、声明)を発表しました。
https://www.stopreikan.com/seimei_iken/2023.05.16_seimei.htm
これは、信教の自由を侵害する、とても危険な宗教弾圧法案です。
声明は、法案が必要である理由として、下記3点を挙げています。
①世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する解散命令請求
②宗教法人解散請求の際の財産保全規定の不存在
③旧統一教会の解散命令請求にあたっての財産保全の必要性
これらは全て、家庭連合の資産を凍結することを念頭においています。
これに対し、私がこの法案が危険だと考えるのは、下記の理由によります。
①法案は宗教法人全般を対象としている
声明で上げている必要が必要な理由は全て家庭連合に関連するものですが、法案の対象は全ての宗教法人です。法律に家庭連合を名指しで記載するのが困難だからでしょうが、これは宗教界全体に適用されるきわめて対象が広いものです。
②一般の会社よりも宗教法人に対する保護が弱くなる
宗教法人法における解散命令請求の要件は、会社法などと比べて非常に緩くなっています。
会社法では、裁判所が解散命令を出す要件として、法務大臣が事前に警告し(会社法824条第1項第3項)、解散命令を申し立てた利害関係人が相当の担保を立てる(会社法824条第2項)などが定められていますが、宗教法人法には、こんな規定はありません。
宗教法人の解散請求は、所轄庁でなくとも利害関係人により行うことができます。法案によれば、「私は利害関係人だ」と言う者が、解散命令を請求することで、簡単に財産保全(つまり資産凍結)できることとなり、財務力の弱い宗教団体は、資金繰りにつまって簡単につぶれてしまいます。これこそが宗教法人法の不備です。
③国家による信教の自由侵害が可能となる
信者の献金は、自由意思によるものです。それは宗教法人の財産となりますが、それを裁判所が管理するということは、信者の信仰を国が抑圧できるという構造になります。解散命令が確定した後の資産凍結は当然ですが、それ以前に資産凍結するということは、財産面からの宗教団体に対する抑圧が可能となるわけで、信教の自由に対して重大な侵害行為が発生する危険があります。
全国弁連の目的は、家庭連合への攻撃ですが、法案は日本の宗教界全体を危機に陥れるものです。全国弁連は、宗教そのものを軽視していると言わざるを得ません。法案の危険性を、宗教界はもとより、世論は認識すべきだと思います。