日本人が知らない日本の道徳

著者は、東北大学名誉教授で、日本独自の文化・歴史の重要性を提唱し、日本国史学会の代表を務める方です。

日本の歴史文化は、「自然道」とも言うべきもので、西洋のキリスト教やイスラム教などの、一神教とは異なるものだ、ということです。
日本人は、自然から多くの恵みを得ていて、それを分かち合う共同体が、自然にできました。
年功序列も、家族という単位も、日本の共同体を構成する基本の構造です。地域も、会社も、国にも、親のような存在がいて、それで社会がまとまるようになっています。国家という単語自体に、家と漢字が入っていますし、日本人がなぜ天皇家を敬愛するかといえば、親のような存在だからです。
私も、天皇家を尊敬しています。第二次世界大戦の末期、日本が無益な玉砕戦を避けることができたのは、昭和天皇の国民を愛する聖断なくして、できなかったことだと思います。
この点、民族や国が、陸続きであるために、常に争い、実力のある者が他人を支配してきた大陸とは、背景が違うのでしょう。

家庭連合は、家庭を重視します。日本の伝統的な価値観は、家族を基礎としていますから、同じ価値観です。
ただし、家庭連合は、キリスト教を基礎とする一神教、それも人格神を信奉しています。つまり、神が天地を創造し、神は人類の親だという考え方です。この点、著者が言うところの、「自然神」とは異なります。

しかし、共産主義が、家庭を支配・被支配の関係と見做し、個人を家庭や社会からバラバラにして、既存価値の破壊を図ることに対し、反対の立場であることは、日本の伝統的な価値観と、全く変わりません。
祖国を愛することなくして、世界を愛することはできません。
自分につながる人々を大切にするのは、当たり前のことだと思います。