養子縁組に関する行政指導

先日のブログで書きましたが、家庭連合の養子縁組について、違法行為があるのではないか、という報道が行われています。
https://www.ogasawara-church.jp/blog/20230118/619

養子縁組については、「民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律」があり、養子縁組のあっせんを業として行う民間機関は、都道府県知事の許可が必要となっています。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=428AC0100000110_20220622_504AC1000000077

厚生労働省は1月23日、家庭連合の会員間で行われている養子縁組に関し、教団側に行政指導の通知を出しました。教団側が発行した書籍は、「教団内で養子縁組のあっせんが受けられると解される懸念がある」と指摘、書籍などの表現について修正を求めたものです。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023012300315&g=soc

家庭連合は、これを受けて、2月1日に、書籍を修正し、改訂版を厚生労働省に送付しました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230201/k10013967321000.html

そして、厚生労働省は、2月1日に、厚生労働省は、養子縁組あっせん法違反での刑事告発は困難だと判断したとの報道がなされました。
旧統一教会の養子縁組あっせん、刑事告発見送りへ…対象者から証言得られず (msn.com)

この書籍とは、家庭連合の信者が、信仰生活を行うにあたっての指針としている、「侍義生活ハンドブック」(以下ハンドブック)だと思われます。
この本は、私たち信者が、信仰生活を行うにあたって参考とする書籍であり、信者の内面性に深い影響を与えるものです。礼拝、祈祷、献金、結婚、出産、葬儀などについて、礼式などが丁寧に説明されています。

家内と一緒に、「養子縁組」に係る部分を、読み返してみましたが、どこにも家庭連合が、養子縁組をあっせんしているように誤解されるような表現はありません。

むしろ逆です。
統一原理は血統を重視します。家庭連合では、不倫を認めません。配偶者は、神から与えられたものだと解釈していますから、他の異性との性的交渉は厳禁となっています。それは、神の血統を守るという教義から来ています。
しかし、その教義をそのまま解釈すると、養子は認められないということになります。血統が変わってしまうからです。

それに対して、ハンドブックには、こう書いてあります。
「実際にはいろいろな理由により子女ができない場合があります。真の父母様は、この課題を解決するために、養子縁組を許可してくださいました。」
つまり、養子であっても、実子と同様、その家庭の血統であることが、教義として正式に認められたのです。

行政指導の対象となった、ハンドブックの、「子供に恵まれない家庭のために養子を捧げるということは、神様の愛を中心とした家庭理想を共に実現するという意味で、世界平和統一家庭連合の美しい伝統となっています」などの表現は、このような教義的な背景によるものです。
そして、「養子を捧げた家庭と、授かった家庭とが、親戚のように仲良く交流し、美しい伝統を築き上げていくのが理想的です。」と結んでいます。
つまり、ハンドブックの記述は、養子縁組に係る方々、即ち養父母、実父母、養子が、精神的な負い目を受けることがないよう、励ます文章なのです。

ハンドブックは、一般人を対象とした本ではなく、家庭連合の信者を対象とした本です。タイトルにもちゃんと、「祝福家庭のための」と、書いてあります。家庭連合の教義を知っていれば、ハンドブックを読んで、家庭連合は養子縁組のあっせんをしてくれるなどと、誤解する人はいませんし、何が何でも養子縁組をしなければならない、などと考える人もいません。実際に、養子縁組をした家庭は、2018年以降で31組と、極めて限定的です。

ハンドブックの前の、信者向けの信仰生活の参考書は、「伝統」(1987年初版)という本ですが、ここには養子縁組に関する記述はありません。世界基督教統一神霊協会(当時)は、あくまで養子縁組を後から認可したのであって、養子縁組を積極的に推奨し、ましてや、あっせんするような考えがないことが、ここからもわかります。

したがって、家庭連合の信者でもない行政担当者が、「養子縁組をあっせんしてくれると誤解を招きやすい」などと決めつけるのは、とんでもないことであり、ましてや、教義に基づく本の内容を修正するように行政指導するということは、もはや信教の自由と言論の自由を侵害する、宗教迫害と言論統制以外の、何ものでもありません。

更には、行政指導の内容は、対象となる相手方の任意の協力によってのみ実現されるものです。(行政手続法第32条)
そして、行政指導に携わる者は、権限を行使しうる旨を殊更に示すことにより相手方に当該行政指導に従うことを余儀なくさせることをしてはなりません。(同第34条)
解散命令請求を前提とした質問権を行使している期間中(1月18日~2月7日)に行われた今回の行政指導(1月23日)は、行政手続法違反の疑いがあります。

結局、大騒ぎした結果、養子縁組あっせん法違反での刑事告発は行われませんでした。後に残されたのは、一連の過激な報道と、行政の粗雑な対応により傷ついた、養子縁組をした養父母、実父母、そして養子の方々です。

私もその方々の話を聞く機会がありました。聞くにつれ、涙を禁じることができませんでした。子供ができない家庭の哀しみ、それを理解し神様に祈って大切な子供を養子を捧げる家庭の思い、そして、育ての親と実の親の切ない心情を理解して、複雑な心境を乗り越えて、二組の親を愛する養子の方々。
深い愛情と信頼関係がなければ、家庭連合の養子縁組は成り立ちません。それは奇跡なのだと、その方は語っていました。

親子の問題は、一方的な意見や、独善的な正義感で、プロトタイプ的に問題化するのではなく、深い心情で受け止めるべき問題なのです。