種の起原(上)

ダーウィンが、1859年に出版した、生物の進化に関する論文の初版本を、岩波文庫で読みました。

それまで、生物のそれぞれの種は、神の創造によって作り分けられていると考えられてきました。しかしダーウィンは、様々な考察から、種が分化したのは、変異と生存競争による、自然選択により、優秀な種が残ってきた結果である、と論じました。進化は不連続的に起きたのではなく、少しずつ長い時間をかけて、連続的に起きました。それぞれの種は、神が創造したという、それまでの常識を否定したのです。

種の起原の正式名は、「自然選択の方途による、すなわち生存闘争において有利なレースの存続することによる、種の起原」です。進化の力の源泉は、生存闘争ということになっていて、神の創造ではありません。人間も例外ではなく、進化の過程で歴史に登場したということになります。

種の起原では、ダーウィンがこれまでの常識に反論しようと、様々な説明を試みています。そしていくつかの点で、説明が非常に難しいことを告白しています。その点、あくまで科学者としての姿勢を保っています。そして、進化論は現代の常識になっています。多くの人は、この説にほとんど疑問を持たずに受け入れています。

しかし、ダーウィン自らが説明に窮しているように、人間の目のような精巧で完全な仕組みが、自然選択だけで作れるのか、本能のように遺伝には直接関係なさそうなものがどのように承継されるのかなど、神の創造という論点を完全に排除することが難しそうな事象がたくさんあります。

下巻も読んで、感想の続きを書きます。