政治と宗教について

自民党と家庭連合(旧統一教会)の関係について、いろいろと報道されていますが、政治家が宗教と係るのは、政教分離の原則に反するのではないか、という意見があります。それなら連立政権を組んでいる公明党はどうなんだ、ということになって、議論がややこしくなっています。

行政書士も、法律に携わる者ですので、この点を少し整理してみたいと思います。

憲法20条は、信教の自由を保障する規定ですが、同時に、特定の宗教が特権を得たり(同条第1項)、国家が宗教的活動をすること(同条第3項)を禁じています。いわゆる政教分離原則です。国家が特定の宗教と結びつくと、その他の宗教が不利益を被るからで、これは信教の自由を制度的に保障するためのものと位置づけられています。(津地鎮祭事件(最判昭和52.7.13))

それでは、国家と宗教が完全に関わるべきではないと憲法が規定しているかというと、そうではありません。宗教団体も社会的な存在であるからには、国家と関りがでてくるのは当然です。それではどのような関係が政教分離原則に反するかというと、上記判例では、下記の基準を判示しています。

  • 行為の目的が宗教的意義を持つか
  • その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるか

これを目的効果基準と言い、これに反しない限り政教分離原則を冒すものではない、というのが上記判例の結論です。

そもそも、政教分離原則は、あくまで国家の行為を定めるものであり、政治家個人の行動まで規制するものではないし、ましてや宗教団体の行動を規制するものではありません。

宗教団体が、現実社会の課題に対して、その理念に基づいて具体的な問題意識を持ち、政治家に対して政策提言するのは、宗教法人が社会的な組織である以上、健全な行動であると思います。そして、そのような政策提言を支持する政治家を応援することも、社会において認められた行動です。むしろ、思想や信条を理由に、団体や個人の行動や発表まで規制されるとしたら、それは大きな問題です。

逆に、政治家が、支援者の会合などに参加し、意見を聞いたり、自らの政治方針について発表することも、自由な活動であるべきです。それが宗教団体であっても、政治家の自由な発言・活動が制限されるべきではありません。