財産保全法案は信教の自由への脅威
立憲民主党と日本維新の党は、宗教法人の解散命令請求に伴う財産保全法案(以下、法案)を、10月20日に国会に提出しました。
https://www.fnn.jp/articles/-/603454
立憲民主党と日本維新の会では、特措法か恒久法かの違いだけで、論旨はほぼ同じですが、法案をよく読むと、法律の穴をかいくぐるような、とんでもないものです。
https://cdp-japan.jp/news/20231020_6920
そもそも、宗教法人法と会社法では、解散命令請求の要件に不整合があります。会社法では、解散命令の要件として刑法違反及び事前警告(824条第1項第3号)が明記されていますが、宗教法人法にはそれがありません。精神の自由に関する事項は、憲法上保護の要請が高いため、宗教法人の解散命令の要件の方がより厳密であるべきなのにそうなっていないのは、法的不整備です。
法的不整合の原因は、それぞれの法律の所轄庁が異なること、改訂の時期が会社法の方が新しいことなど、いろいろあるでしょうから、仕方がない一面があります。そのために、裁判所が、宗教法人の解散には刑法違反などの要件が必要だと、判示しているのです。
ところが法案は、その法律の不整備の「いいとこどり」をしています。即ち、法案は第4条で、財産保全の条項(会社法825条)他を準用していますが、解散命令の要件に関する条項(会社法824条)は敢えて準用していません。かつ付則第3条で、過去に解散命令請求が行われた宗教法人にも遡及するとしています。
なぜ会社法824条を準用しないかと言うと、これを準用すると、家庭連合に対する解散命令は要件を満たさなくなるからです。そして遡及効を適用することで、財産保全どころか、解散命令請求そのものが棄却されるということになりかねません。だからあえて、824条を外しているのです。しかしこれは、法の穴をかいくぐるような、姑息なものです。
そもそも、人権を制限するような法令に、遡及効を認めてはなりません。これは法の安定性を守るための、法治国家における大原則です。
つまり法案は、家庭連合の解散ありきであることが見え見えの、恣意的な法案なのです。
留意するべきは、これは家庭連合以外のすべての宗教法人に適用されることです。そして、所轄庁以外の利害関係人も解散命令請求の申し立ては可能ですから、適用範囲は極めて広くなります。民事訴訟をかかえる宗教法人は、この法案によって、財産が差し押さえられるとすれば、宗教的な行為が制限されることになります。
法案は、信教の自由への脅威であると言わざるを得ません。