新聞と日本人 ーなぜ、真実を伝えないのか
元TBS社員で作家の井沢元彦氏の著書です。
本書では、まず朝日新聞が、従軍慰安婦問題に関し「軍の指令による強制連行があった」というデタラメを報じ続けていたことに触れます。朝日新聞は、その他にも、東日本大震災の際に福島第一原発の社員約650名が吉田所長の待機命令に違反して避難したとか、その昔は北朝鮮による拉致監禁はないとか、様々な誤報を繰り返しました。
朝日新聞が、なぜこのような誤報を繰り返すのかは疑問ですが、この本が指摘するのはその点ではなく、なぜ日本においては、発行部数第一の大衆迎合的な新聞しかなく、内容を重んじるクオリティペーパーがないのか、という点です。
日本人は、言霊を信仰していると、著者は言います。起きてほしくないことは言ってほしくないし、聞きたくない、という文化があって、新聞も大衆が望まないことは書きません。発行部数に顕著に影響するからです。
しかし、平時ならこれでもよいですが、非常時にはマイナスに働きます。太平洋戦争前夜、英米の態度を決定的に硬化させたのは、日独伊三国同盟でした。これに反対したのが吉田茂や山本五十六でしたが、朝日新聞や東京日日新聞(今の毎日新聞)は、日本は無敵だと盲信する国民を煽り立てる記事を書き、世論を日独伊三国同盟に誘導しました。なぜそのような記事を書いたかと言えば、新聞が売れるからです。
新聞が世論を煽り立て、その世論が新聞に記事を書かせる。一旦このようなスパイラルに入ると、もう新聞も自分の意思では、公平な記事を書けなくなります。こうして、日本という国が、無批判に一つの方向に突っ走っていったのです。その結果日本は無謀な戦争に突入し、大きな犠牲を払うこととなりました。
私は、家庭連合を取り巻くマスコミと世論も、このような状況に陥っていると思います。私たち信者は当事者ですから、報道されている内容と実際の私たちの姿がいかにかけ離れているかを知っています。しかし実際の姿を知らない世間の人々は、マスコミが描き出した虚像に惑わされ、家庭連合に対する巨悪のイメージのみが膨れ上がっています。そして世間が期待するストーリー、すなわち巨悪から被害者を守る正義の人々、という物語ができあがり、それが劇場型で独り歩きをしているのです。
私たち信者がどんなに声を上げたって、マスコミが取り上げることはありません。マスコミは部数を伸ばすという宿命があるからです。この本には登場しませんが、テレビにも全く同じ論理が働いています。すなわち、視聴率至上主義です。これを、マスコミの横暴だとか、不公正報道だと叫んでもあまり効果はありません。なぜなら、これは世間が期待しているものだからです。
それでも、私たちは声を上げ続けなければなりません。日本が正しい言論を形成する力があるのか、やはり雰囲気に流されるだけなのか。今、まさにその分岐点にいるからです。
そして私は、日本人の賢明さに期待したいと思います。勇気をふるって、正論を述べる人々が現れてきているからです。私が毎日情報発信しているのは、まさにこの理由からです。