第三者による取消権

民法では、取消権が規定されています。取消権とは、既に成立した契約を、最初から無かったことするよう、契約の一方が相手方に対して、請求できる権利です。これは形成権ですので、請求しなければ取り消すことはできません。

取消権を行使できる取消権者は、民法(以下、法)で2つ規定されています。

①制限行為能力者(未成年、成年被後見人、被保佐人、被補助人)
本人又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者です。(法120条第1項)
制限行為能力者は外見的に判断できますが、家庭裁判所で制限行為能力であることの審判が必要ですから、それ以前の行為を取り消すことはできません。

②錯誤、詐欺又は強迫の場合は、瑕疵ある意思表示をした者
本人、又はその代理人若しくは承継人です。(法95条第1項、法96条第1項、法120条第2項)
家庭裁判所の審判は不要ですが、第三者から取り消す場合は、(a)本人が錯誤、詐欺、脅迫により献金したこと、(b)家族はその代理人であること、を示す必要がある、ということになります。

現在、家庭連合(旧統一教会)の被害者救済法に関する議論が行われています。高額献金と言われるものを、本人のみならず、家族からも取消すことができるように、要件を定めるようです。通常の契約ではなく、あくまで高額献金という特定の取引についての取り消しを想定しているようですから、②の類型になります。

それでは、宗教上の信仰により、献金について、どのような場合に、(a)の錯誤、詐欺、脅迫に該当するのでしょうか。本人がそれを主張した場合は、取り消しができるでしょうが、本人が主張しない場合、家族が本人の意思に反して取り消すことは、他人の財産処分権を侵害することになります。また、家族は、取り消しについて(b)代理権を持つのでしょうか。

被害者救済法の検討にあたっては、慎重な検討を進める必要があると思います。