ワイルド・スワン(下)

ワイルド・スワンの下巻を読みました。上巻は、日本軍による占領や、国民党と共産党の戦いに巻き込まれた、著者の祖母や母の話でしたが、下巻は毛沢東の共産党によって引き起こされた、1966年から1976年までの文化大革命の話です。

毛沢東は、自らを神格化し、人民と人民を戦わせることによって、自らの地位を守りました。その基本的な考えは、人間の悪なる思い、即ち憎しみや猜疑心を最大限に引き出して、全てを破壊することです。そのよりどころとしたのが共産主義でした。

共産主義の理想とするところは、全ての人が平等で助け合って生きる世界です。しかし共産主義は人間のマイナスの感情を増加させ、その結果、理想とは全く反対の、人間同士が憎しみあうような世界が出来上がってしまいます。文化大革命は、壮大な共産主義の実験場であったとも言えます。

文化大革命は、直接的には毛沢東自身の、狂人的な性格により、引き起こされたおのなのかもしれません。しかし共産主義を根拠としている限り、必然的に理想と反対の社会が出来上がってしまったのだと思います。

実体験をもとに書かれているため、圧倒的な迫力があります。いろいろと考えさせられる本でした。