ノモンハン戦争

ノモンハン戦争とは、1939年5月に発生した、モンゴル人民共和国と満州国との間の、国境をめぐる紛争です。当時モンゴルはソ連の、満州国は日本の傀儡国家でしたから、ソ連と日本の代理戦争とも言うべきものでした。

1932年に日本の傀儡政権として満州国が作られ、多くの日本人が送り込まれました。そして1937年の盧溝橋事件以来、中国の東北部に進出した日本の関東軍は中国本土への進出を勝手に進め、半年のうちに上海、南京を陥落させました。大本営がそれを追認し、マスコミが宣伝し、日本国民が提灯行列でそれを祝うというようなことが繰り返され、日中戦争は泥沼化するわけです。

一方モンゴルは、ソ連が政権を掌握し、ソ連のコミンテルンに反対する者を次々と粛清しました。ソ連はモンゴル人からモンゴル文字を奪い、今でもモンゴルで使われているのはロシア語で使うキリル文字です。

ノモンハン戦争は、ハルハ河付近の、東西20km、南北70kmという、今では砂漠化して土地の価値もないところで、日本とソ連でそれぞれ2万人もの兵士の命が犠牲になった事件です。当時からしても戦略的な意味が薄く、日本人の中でもほとんど知られていない戦争が、どうして起こったのか、モンゴル学者の田中克彦氏が、詳しく書いています。直接の引き金は、辻政信という参謀が独走したことですが、それを許した日本の時代的背景があったことは間違いないと思います。

私の祖父は、いわゆる満蒙開拓団として中国東北部に移住し、終戦後命からがら帰国しました。もしかしたら私はこの世にはいなかったかもしれません。いろいろ考えさせられる本でした。