歴史と戦争
作家の半藤一利さんは、今年の1月に90歳で他界されました。映画 日本の一番長い日などで有名ですが、太平洋戦争前後の日本の歴史を、丁寧に描き続けた方です。
この本は、その半藤一利さんの著作から、考え方がよくわかる記述を切り出した、オムニバス形式の本です。
私は東京オリンピックの前年の生まれですから、戦争体験はありません。しかし父方は満蒙開拓団で広島から中国東北地方に移住して、戦後命からがら帰国しました。母方は祖父が広島で原爆に被爆し、その後亡くなりました。母は疎開していて無事でした。
直接経験したわけではないけれども、なぜ戦争が始まったのか、なぜやめることができなかったのか、については、他人事とは思えないのです。一つ間違えば、私はこの世に生まれて無かったのじゃないか、と思うからです。
半藤さんの考えでは、軍が力を持ち、マスコミがそれに便乗し、国民が熱狂し、もはや誰も止めることができなくなった、ということのようです。最後は、昭和天皇が責任をとる覚悟で決断し、終戦を迎えることができました。でも、それ以外には責任の所在は結局曖昧で、戦争は悪だ、というようなことになっています。
戦争が悪なのではなくて、戦争を始める人が問題なのだと思います。この本では、日本国憲法こそ戦争を否定した立派な憲法だと言っていますが、きちんと諸外国なみに防衛力を持ち、それを国民を代表する政府が制御し、憲法でそれを担保することは必要だと思います。
しかし、半藤さんが終生テーマとしてきた、あの無謀な戦争を始めたこと、止められなかったことについて、私たちは歴史の事実に対してはきちんと向き合うべきと思います。とても考えさせられる本でした。