日本の未来と家庭再建(10)  見合い結婚が果たしてきた役割

結婚していない理由として、価値観以上に多くの若者が挙げたのが、「出会いがない」ということでした。 ここには「お見合い結婚」が激減していることが、影響しています。

2005年に発表された論文「職縁結婚の盛衰と未婚化の進展」を見ると、1960年代から2000年代にかけて、未婚女性の初婚発生率が激減していますが、その中で恋愛結婚は横ばいである一方、見合い結婚が激減しています。現象だけ見れば、お見合い結婚の減少が非婚化・晩婚化の理由となっています。

この間、日本社会は欧米文化の影響を受け、好きな人とでなければ結婚したくないという、恋愛結婚至上主義の考え方が広まりました。それでも、恋愛結婚の数が増えれば非婚化・晩婚化には至りません。しかし現実的にみれば、恋愛から結婚に到着するのは、ハードルが非常に高いのです。

世の中が、映画やドラマで出てくるような、イケメンや美少女系の男女ばかりであれば、恋愛も成立する確率は高いかもしれません。しかし実際は、そういうことが不得意な男女が多いのではないでしょうか。自分が結婚したいと思っても、相手が受け入れてくれるかどうかわかりません。一度断られれば、次にチャレンジするのはかなりエネルギーが必要です。結局結婚するチャンスを逃してしまうというケースが少なくないのです。いわば、恋愛結婚は弱肉強食の世界であるとも言えます。

しかし、たとえ恋愛が不得意であっても、よい夫婦や親になることはできます。そういう男女に結婚の機会を与えるのが、お見合い結婚という仕組みだとも考えられます。本人同士ではなかなか結婚に至ることができなくても、周囲の人の協力を得て、結婚することができるのです。

さらには、お見合い結婚の方が、恋愛結婚よりも離婚率が低いという調査結果もあります。恋愛結婚の場合、恋愛の時のエネルギーと、結婚後のエネルギーは、恋愛時の方が高いでしょう。結婚すると、お互いの悪いところが目につくようになり、冷めてしまって、次の恋愛を求めるようになる、というわけです。恋愛結婚が悪いということではありませんが、一つの現実ではあります。

ある方が言っていましたが、恋愛結婚よりもお見合いの方が、コスパがいい、という面もあるようです。恋愛するということは、時間とお金をかけて関係作りをするわけですが、何年もかけて別れてしまえば全部無駄になる。お見合いなら結婚するかしないか、判断が早いので、無駄な時間とコストをかけずに済む、というわけです。一つの考え方かもしれません。

お見合い結婚が減少した一つの理由は、まわりでお見合いを世話する大人が減ったことです。かつては、なかなか結婚できない男女がいると、やたらとお節介を焼くおばさんたちがいました。また、早く所帯を持たないと一人前になれないぞ、などと説教するおじさんもいました。現代では、そんなことをする人はいなくなりました。間違いなくハラスメントになってしまうからです。

結婚難民となる男女が増えている中で、お見合い結婚の価値を、もう一度見直してみてもよいのではないでしょうか。