日本の未来と家庭再建(6)  孤立社会が生み出した悲劇②

家族の弱体化によって、高齢者のみならず子供たちも犠牲となっています。ただでさえ少なくなっている子供を、大切に育てる環境がなくなってきているのです。三世代家庭なら、祖父母、両親が、一人の子供に愛情を注ぐことができます。しかし現代では、未婚の母や離婚などにより、片親の家庭が増えています。シングルマザーが、子育てと仕事を一身に背負って、必死に生活をしているというケースが増えています。

もちろん、ひとり親家庭でも、多くの子供たちが愛情を受けながら成人しています。親の苦労を身近に見ているからこそ、他人の苦労がわかるという方も、たくさんおられます。しかし、子供たちにとっては、寂しい思いをすることも少なくないのではないでしょうか。

子供の貧困率を見ると、おとなが2人以上いる世帯が約1割ほどであるのに対し、大人が1人の場合は約5割に達します。児童虐待の発生率も同様で、米国の調査では両親が揃った家庭と比較して事実婚離婚1人親再婚家庭では虐待の発生率が約4倍の高さであると言う報告もあります。

近年虐待件数が急増している背景には複雑な家庭環境の子供が増えていることも影響しているようです。2018年には、児童相談所の虐待相談対応件数が年間150,000件を超えました。10年前の4倍以上となります。子供が危機に瀕していることは、間違いのない事実と思います。

虐待の問題は死に至らなかったとしても、子供の心に大きな傷を付けます。また虐待を受けた子供が、大人になって自分の子供に対して虐待を繰り返すという、世代間連鎖も起きる恐れがあります。

現代の児童虐待の問題を考えるとき、子供は両親が、そして祖父母が、さらには地域全体で育てるというかつての日本の子育てについて、再評価してもよいのではないかと思います。