日本の未来と家庭再建(7)  孤立社会が生み出した悲劇③

孤立社会によって、成人男性についても困難な時代となっています。今や30代の前半男性の未婚率は半数に達し、40代50代で妻や子供がいない男性は相当な数になります。

一般的に、女性よりも男性の方が孤独に弱いと言われています。夫を亡くした女性が長生きするのに対し、妻に先立たれた男性は早く亡くなってしまうことが少なくありません。また、家族と一緒に食事をしない、孤食の男性は、鬱病にかかる割合も高くなると言われています。男性は非常に孤独に弱いのです。

男性は守るべき家族がいると強くなります。失業しても、家族がいれば必死で再就職先を探します。しかし、独身であれば、「生活保護でもいい」と思ってしまうケースが少なくないのです。

孤立した人の増加は、安全・安心な社会を損なう可能性も高くなります。2013年に法務省で無差別殺傷事件を起こした52名の犯人を調査したところ、配偶者と同居している人は一人しかいなかった、という報告があります。また、36人の死傷者を出した京都アニメーション放火事件の犯人も、複雑な家庭環境で育ちました。社会的に孤立して、あのような事件を起こしましたが、事件後病院から転院する際に、「こんなに優しくされた事は今までなかった」と述べたそうです。

男性に多い引きこもりも高齢化が指摘されています。2019年3月に内閣府が中高年(40歳~64歳)の引きこもり人数を発表しましたが、若年層を上回り61万人にものぼることが明らかになりました。その4分の3以上が男性です。

これらの人々のほとんどは、親と同居する未婚者です。その親も高齢化し、8050問題が指摘されています。親が80歳、子が50歳という年齢です。親自身も介護が必要な年齢になり、退職金等の蓄えもなくなって、親が亡くなった時には一人きりで残されてしまいます。

孤立社会により成人男性も大きな困難に直面しているといえます。