ヒトラー 虚像の独裁者

第二次世界大戦を引き起こしたヒトラーが、なぜ独裁政権を作ることができたのか、なぜ何百万人ものユダヤ人を殺戮したのか、様々な文献から検証した本です。

ヒトラー自身は、演説以外に大した能力もなく、とても一国を率いる能力も覚悟もない人物です。それでも、第一次世界大戦以降、極端なインフレに見舞われ、できたばかりの民主主義政治では局面を打開できないとして、カリスマ性を持ったリーダーを求める国民世論から、ドイツ国民はこのような狂人を自らの指導者として選んでしまいました。人の命をモノとしてしか見ずに、ユダヤ人という民族を根絶やしにしようという狂った思想は、サブタイトルの通り悪魔としか言いようがありません。

ヒトラーの演説は、大衆をその気にさせ、世論を作ることに、天才的な効果がありました。しかし英米仏を相手にして戦争をしかけながら、戦局が不利になれば、その責任を全て他人に押し付け、責任をとらないヒトラーの態度は、史上最大の詐欺師だと思います。

戦後はヒトラーに関する様々な研究が行われていますが、文化大革命を起こした毛沢東と言い、ヒトラーと言い、思想は違っても、国民が独裁者の台頭を許したという点では、共通するものを感じます。