東大の南原繁総長と最高裁の沖野眞巳判事

南原繁という方は、1945年に第15代の東京大学総長になられた方です。この方は、日本におけるキリスト教の先駆者である内村鑑三の弟子であり、ご本人もキリスト教徒でした。そうした方が、日本の政治や経済界にも非常に大きな影響を与える東京大学の総長になられたのです。

この南原繁について、もう少し深めてみたいと思います。彼は『国家と宗教』という本を書いています。これは、国家の成立と宗教とは切っても切れない関係にあるということを論じた本です。彼がこの本を書いたのは昭和17年、まさに戦争の真っ最中でした。当然、当時の日本の当局からはかなり目をつけられたのではないかと思いますが、彼はキリスト教精神に基づき、国家において宗教が非常に重要であるということを述べています。

この本の15ページ目には、次のような記述があります。「およそ国家の問題は、根本において、全文化との内的統一を有する世界観の問題であり、従って究極において宗教的真性の問題と関係することなくしては理解し得られない、というのが著者の確信である。そのことは他の世界についても言い得ることであるが、ことにヨーロッパの場合においてそうである」。

このように、彼は非常に緻密な論文を書かれています。プラトンの理想国家論から始まり、イエス・キリストが現れ、キリスト教における「神の国」というものを主張したこと、そしてその延長線上で、様々な経緯を経ながらヨーロッパにおける国家というものが成立していったこと、その過程で多くの哲学者が現れたり、宗教改革が起こったり、あるいは共産主義が出現したりと、様々な変遷を経ながらも、その中心軸には常に宗教があった、ということを述べているわけです。

一方、沖野眞已判事という方についてですが、ご存知の通り、家庭連合の解散命令に関する特別抗告について、最高裁における担当判事の一人でした。家庭連合側からは、この方が以前、家庭連合に対して攻撃的な思想を持った言動をしていたということで、忌避の申し立てがなされました。結局これは最高裁によって却下されました。実際に特別抗告棄却の決定文を見ると、沖野判事の名前は明記されていませんでしたが、第三小法廷のメンバーであることは間違いありませんので、家庭連合の解散に関する最終決定に深く関与されたことは間違いないだろうと思います。

私がこの南原繁氏と沖野眞已判事を比較する理由は、次の点にあります。南原繁氏は東京大学総長になる前、1945年3月に東京大学法学部長になっています。そしてちょうどその80年後、2025年4月に、この沖野眞已判事が東京大学法学部長に就任しているのです。ここに、私は一つの奇妙な一致点があるのではないかと感じています。

そして、南原繁総長は、ご自身もキリスト教徒であったことから、宗教というものを非常に重要なものとして認識しておられた方です。一方、この沖野眞已判事は、宗教の侵害は憲法違反であるとする特別抗告に対して、それは憲法問題ではないという理由で、審理すらしませんでした。決定文を見ると、これは憲法問題ではないから議論もしない、という記載になっています。このような態度は、宗教というものの重要性、その歴史的な意味というものを全く考慮しないものであると言えます。同じ東京大学法学部という、日本の法曹界の中核を担う組織の責任者であった方が、なぜこのように正反対の判断をされるのか。私はそこに、大きな歴史的な変化が起きてしまったのではないかと感じています。

法曹界がこの宗教の重要性を、これ以上ないほど軽視するようなことになるのであれば、これは国家の存立、国家のあり方にも大きな影響を与えかねない内容であると私は思います。少なくとも80年以上前に、南原繁氏という元総長が書かれたこの内容は、国家における宗教の位置づけを明確に示しているわけですから、そうしたものを引き継いでいかなければならないと思うのです。

私自身も、この大学で学生時代に、民主主義を全く否定するような暴力的な手段によって迫害を受け、排除された経験があります。しかしその中においても、これは信教の自由に関わる問題であるということを、訴え続けてきました。その戦いはまだ終わっていないと思います。少なくとも、国家を代表するような立場にある方が宗教を認めないということであれば、このことについては、きちんと訴え続ける必要があると思っている次第です。

私の学生時代に、東京大学でどのようなひどい暴力的な迫害行為があったのかについては、また別の機会に、資料をもとに解説していきたいと思います。本日は、80年という時を経て現れた、東京大学法学部長、そして一方は東京大学総長に、他方は最高裁判事にまでなられたこの2人の大きな違いと、奇妙な一致点についてお話をいたしました。

動画はこちら
https://youtu.be/AbpWGIihuf8