家庭連合の解散命令におけるコンプライアンス宣言の位置づけ 劇的改善が行われているのに効果がないと言い切る理不尽
東京地裁における家庭連合の解散命令の裁判においては、コンプライアンス宣言後の改善が、最大の焦点だと思います。
家庭連合は、2009年にコンプライアンス宣言をしました。文部科学省は、コンプライアンス宣言をしたとしても、「法令に著しく違反した」ことに変わりはないし、コンプライアンス宣言後の施策も有効ではないとしました。
家庭連合は、コンプライアンス宣言後は劇的な改善をしており、現在はほぼ問題がないのであって、解散する必要はない、と言っています。
【文部科学省の主張要旨より】
このほか、法81条1項1号の「行為をしたこと」との文理上、同号の該当性は、客観的事実の存在をもって足り、発生後に改善傾向が認められるか否かや、再発のおそれの有無は問わないというべきである。利害関係参加人は、コンプライアンス宣言により、献金勧誘等行為をめぐる状況が劇的に改善をした旨主張するが、仮に改善傾向があるとしても、同号該当性の判断に影響しない。(P9)
また、前述のとおり、法81条1項1号の該当性の判断においては、改善傾向が認められるか否かや再発のおそれの有無は問わないというべきであるが、仮にコンプライアンス宣言以降の状況を踏まえて判断すべきであるとしても、同宣言等の施策には、十分な実効性が認められず、利害関係参加人の本質的な体質改善はみられないのであって、同号に該当すると の結論は左右されないというべきである。(P12)
【家庭連合の反論要旨より】
また、利害関係参加人においては、コンプライアンス宣言以降の組織的な改革の結果、献金勧誘等行為をめぐる状況が劇的に改善しており、同宣言以降の勧誘行為について民事訴訟を提起されることがなくなるなどし、近時では信者間のトラブルさえほとんどみられず、被害の申告は激減している。さらに、民事判決における損害賠償金、和解金及び示談金といった金銭は全て支払済みであって被害は回復されているから、違反行為及び被害のいずれについても継続性があるという余地はなく、したがって、悪質性もないといえる。
そうすると、違反行為の組織性、継続性及び悪質性の3要件はいずれも現在存しないし、また、継続性について述べたところからすれば、解散命令の必要性及び緊急性を欠くことも明らかである。
それにもかかわらず、30年前の過去の問題を蒸し返して「法令に違反して、著しく公共の福祉を害する」と明らかに認められる行為」に該当するとして解散命令を発令することは到底できない。(P17)
これを受けて、東京地裁は、家庭連合の主張を一部受け入れて、コンプライアンス宣言前とコンプライアンス宣言後の、被害の規模や態様を比較しました。
その結果、明らかに規模は縮小していることは認めました。しかし、信者を脅して献金させるという「類型的傾向」は表面化していないだけで、現在でも続いていると推定されるから、解散が必要だ、という結論としたわけです。
【東京地裁の説示より】
利害関係参加人は、コンプライアンス宣言以降の徹底した取組により、32件の民事判決等で指摘された問題が根本から改善解消し、違法な献金勧誘等行為による被害がなくなっている旨を主張し、このことは訴訟提起件数等の数値の減少に表れている旨を指摘しており、確かに、利害関係参加人が指摘するところおり、同宣言後の被害申告(訴訟提起等の件数)には減少傾向がみられる。(P80)
通知書により損害賠償請求をした上記179名のうち大部分が、コンプライアンス宣言後の献金勧誘等行為の懸念として、本件問題状況が現実化した際にみられるものと同様の事実関係、すなわち、①利害関係参加人の信者が、入信前から自身や親族に、複雑な家庭環境、不幸な出来事、高齢等による判断能力の制約等があるなどの困難な事情を抱える者に対し、②利害関係参加人の教理を伝導する過程で、その教理に関連して、種々の深刻な問題の原因の多くは怨恨を持つ霊の因縁等によるものであり、このような問題を解消するためには献金等が必要である旨を繰り返し申し向けるなどして献金等を行うよう勧誘し、③その結果、借財等により原資を捻出する事にして、本人や近親者等の生活の維持に重大な支障が生ずる献金等を繰り返し行わせたことなどを指摘して、損害賠償を求めている。(P83)
この後、コンプライアンス宣言は効果がないということを、東京地裁は延々と述べています。そして、こう結論づけるのです。
この点に関し、顕在化する形での被害申告の数は、コンプライアンス宣言後において減少傾向が続き、近時における数は相当に減少しているが、既に示したとおり、このような被害申告の数は、本件問題状況の緩和を直ちに意味するものではなく、根本的な対策ではない弥縁策の類によっても減少し得るといえるところ、実際に、通知書送付に至る前段階における信者間での解決等が推奨されていることも考慮すると、被害申告が顕在化しない類型に該当するものが相当程度存在することが想定される点を十分に考慮すべきである(P94)
東京地裁は、コンプライアンス宣言を、「弥縫策」、つまり、取り繕うだけの中身のない対策だと言っているのです。
従って、被害は根本解決されているはずがないから、現在でも表面化していない問題がかなり存在すると想定されるから、家庭連合を宗教法人として残すことはできない、と結論しているのです。
それでは、実際のコンプライアンス宣言とは、どんなものだったのでしょうか。
これについては、家庭連合がホームページで公開しています。
https://ffwpu.jp/news/4839.html
第1 信者らの献金奨励・勧誘活動についての指導基準
これまで信者等が信徒会等の活動の一環として献金を奨励・勧誘する際に、家系図等を用い、先祖の因縁ないし先祖解放等を理由に献金の必要性を説くようなことが一部行われてきたようです。しかしながら、当法人に対する民事裁判においては、このような行為が、目的・方法・結果において社会的相当性を逸脱する不法行為と認定され、当法人の使用者責任が問われてきました。
献金は、自らの自由意思で行われるべきものであり、主の路程(文鮮明師の生涯路程)、及び統一原理を学んでその趣旨・目的に賛同した結果として捧げるべきものであります。 それゆえ、以下を再徹底することとしました。
1.献金と先祖の因縁等を殊更に結びつけた献金奨励・勧誘行為をしない。
2.信者への献金の奨励・勧誘行為は信者本人の自主性及び自由意思を尊重し、信者の経済状態に比して過度な献金とならないよう、十分配慮する。
3.献金は、統一原理を学んだ者から、献金先が統一教会であることを明示して受け取る。
第2 信者らが自主運営するビデオ受講施設等における教育活動等についての指導基準
(1) 勧誘目的の開示
信者らが自主的に運営するビデオ受講施設等における教育内容に統一原理を用いる場合、勧誘の当初からその旨明示するように指導して下さい。また、宗教との関連性や統一教会との関連性を聞かれた際には、ビデオ受講施設等の運営形態に応じた的確な説明ができるよう、ご指導下さい。
(2) 法令遵守(コンプライアンス)
特定商取引法をはじめとする法令違反との批判を受けないよう配慮して下さい。例えば、信者らが自主的に運営するビデオ受講施設等で受講料を徴収する場合には最初からその旨明示し、受講契約書等必要書類を交付しなければなりません。また、勧誘に際しては、「威迫・困惑させた」「不実を告知した」と誤解されるような行為がないよう、注意して下さい。
https://ffwpu.jp/wp-content/uploads/2023/10/kaikaku_report.pdf
このコンプライアンス宣言が発信されたのは、2009年3月25日です。奇しくも、解散命令の決定の日です。
私は、このコンプライアンス宣言以降、教会は変わったと思います。当時の徳野会長が謝罪会見して辞任したのも衝撃的でした。
私自身も、コンプライアンス宣言以降、宗教的な行為として献金はしてきましたが、強制された記憶は全くありません。あくまで自由意志であり、統一原理を学んでその趣旨・目的に賛同したものであることは、断言できます。
更に言えば、2022年の安倍元首相暗殺事件以降、教会大改革が行われて、大きな献金そのものがなくなったように思います。
過去はいろいろあったかもしれません。それに対しては教会は真摯に対応すべきだし、事実窓口を作って個別に対応していると認識しています。
コンプライアンス宣言が実効性がなく改善実績がない、単なる弥縫策だという東京地裁の判断は、悪意のある壟断であると言わざるを得ません。
解散命令の抗告審においては、コンプライアンス宣言後に家庭連合がどのように改善されたか、きちんと主張することが、大切だと思います。
動画はこちら
https://youtu.be/cvn18fzDamg


