国策裁判 家庭連合解散命令は「必要かつやむを得ないもの」ではない
家庭連合の解散命令は、信教の自由が論点の一つとなります。この場合は、慎重に判断を行う必要があります。
東京地方裁判所の決定書でも、この点は意識していて、このように書いています。
「宗教法人に解散を命ずるためには、宗教法人法81条一項柱書及び同項1号に該当することに加え、解散命令が、判断時までの同号該当行為を踏まえた当該宗教法人に対する措置として、必要でやむを得ないものでものと言えることを要すると解すべきである」(P102)
この点は、当たり前のことですが、東京地裁は議論のスタートに立ってはいます。
問題はここからです。
- 問題設定の間違い
まず、東京地裁は、解決しなければならない問題を設定していますが、ここが間違っています。
東京地裁は、家庭連合の問題点として、32件の民事事件、和解・示談を含む1560名の被害者、総額204億円の被害額を挙げ、「本件問題状況」が、「背景事情」のもとに、「現在でも看過できない程度に残存している」(P104)存在しているとしています。
ここで「本件問題状況」については、こう説明しています。
「利害関係参加人、つまり家庭連合の信者が、自身や親族に困難な事情を抱える者に対し、種々の深刻な問題の原因の多くは怨恨を持つ霊の因縁等によるものであり、このような問題を解消するためには献金などが必要である旨を繰り返し申し向けるなどして、献金などを行うように勧誘し、その結果、借財等により原資を捻出するなどして、本人は近親者などの生活の維持に重大な支障を生ずる献金などを繰り返し行わせる」(P105)
しかしこれは、全国弁連が作り上げたストーリーであって、実際の私たちの献金は、そんなものではありません。私自身、40年も信者をやってきますが、収入の十分の一を捧げる十一条が基本にあって、神から与えられたものは神に返す、それが神のために役に立つならありがたい、そういう想いで献金はしているのです。先祖解怨や先祖祝福などの献金もありますが、これも基本的に同じ動機です。
さらに決定書では、献金の背景事情を、こう説明しています。
「家庭連合の信者は、家庭連合の教理を伝道する過程の一環として、その信者を獲得し、家庭連合のために献金などをさせることを目的として、献金勧誘等行為をしており、家庭連合の信者によるこのような献金勧誘の内容は、家庭連合の教理と密接に関連し、献金勧誘行為それ自体がその教理の実践とされていたという背景事情」(105)
献金をすることを目的とした伝道などはしていないし、献金をさせるような教理など、原理講論や天聖経などの経典にもありません。
つまり、解決しなければならない問題点の設定自体が、間違っています。
2. 解散命令に「必要性」はあるか?
解散命令の必要性については、東京地裁は明確な指摘をしていません。単に、「家庭連合に事態の改善を図ることを期待するのは困難というべきである」(P106)と決めつけているだけです。
そして、「法人格を利用して収受管理し、宗教法人に与えられた税制上の優遇措置を受けている」(P106)としたうえで、「以上によれば、家庭連合に上記の法人格を与えたままにしておくことは極めて不適切であり、このような辞退への対処としては、もはや解散によってその法人格を失わせるほかに適当かつ有効な手段は想定し難く、解散を命ずることが必要というべきである」(P106)と言っています。
税制上の優遇措置が問題だというならば、これを事業として法人税を課せばよいはずです。献金を宗教的な行為としてみるか、事業収益として見るかは、これはこれで問題ですが、これば文部科学省や裁判所が判断することではなく、税務署の判断事項です。宗教法人でも、事業収益には課税されるのですから、免税されているのが怪しからんから解散だ、という議論は乱暴に過ぎます。少なくとも、解散命令が必要とは言えません。
法人格については、宗教行為を行うにあたって、個人がそれぞれ礼拝堂を購入することはできませんから、信者の資産を集めて法人名義で土地建物を購入するのは、まさに宗教法人法の趣旨に適うことであって、解散命令が必要なものだとはとても言えません。
3. 解散命令は「やむを得ない」といえるか?
ここが一番の問題です。
「やむを得ない」とは、他に代替手段がない、ということです。
家庭連合の抗告理由書要旨にも、解散命令決定は、LRA基準を満たしていないと指摘しています。LRA基準とはLess Restrictive Alternativeの略ですが、およそ精神の自由、その中でも最も尊重されるべきとされる信教の自由を制限するにおいては、「より制限的でない他の手段」が存在しない場合に限り、当該規制を合憲と認める、というものです。
東京地裁は、このように言っています。
「現在においても、本件問題状況、すなわち、同種類似の被害を生じさせるおそれがある状況がなお看過できない程度に残存していること、家庭連合は本件問題状況に対する根本的な対策を講ずる契機および機会を有していながら、上記の根本的な対策を講じておらず、もはや、家庭連合に事態の改善を図ることを期待するのは困難というべきであること、宗教法人の解散命令制度は、飽くまで、法律によって与えられた地位である宗教法人としての法人格につき、それを与えたままにしておくことが不適切となった場合に法人格を失わせるとの法的効果を有するものにとどまり、当該法人格の喪失により事実上を生じる影響は、当該法人格を有していたことに伴う反射的利益に対するものであるものであることからすれば、家庭連合に解散を命じることは、やむを得ない法的措置であるということができる。」(P107)
どこにも、「より制限的でない他の手段」を検討した形跡がありません。
通常、不祥事が発生した場合は、行政は行政指導を行います。自動車メーカーがデータ改ざんしたら是正措置を命令されるし、金融機関が不正融資をしたら、営業停止などの命令がされます。文部科学省は、30年も前の「本件問題状況」に対して、行政指導をしたのでしょうか?何もしていません。
また、会社を解散させる場合も、まず法務大臣が、その会社に対して通告して、それでも改善が無い場合に、初めて解散命令が出されるようになっています。(会社法824条第1項第3項)
このような是正措置、事前通告も行わずに、いきなり解散命令を行うことは、「より制限的でない他の手段」がないとは、到底言えません。つまり、信教の自由という、最も壊れやすい基本的人権を守る為に人類が築き上げた「LRA基準」を、東京地裁の決定は満たしていないのです。
このような憲法違反の決定には、断固反対いたします。
動画はこちら
https://youtu.be/lh4t_R3lph8
