家庭連合解散命令高裁の決定が最終ではない

家庭連合の解散命令の決定が3月25日に東京地裁によって行われました。家庭連合は4月7日に即時抗告を行って、東京高等裁判所で抗告審が行われています。
この裁判の結果がどれぐらいの期間で出されるのかについては、いろいろ議論されていますが、二、三か月で出るということでもないと思います。

そして、高裁の決定が出されると、それで解散及びそれに引き続いての清算業務が直ちに行われるかのような報道が行われていますが、それは間違いです。
先日、衆議院議員の有田氏が国会質問で文部科学省に、高裁の決定が出たら、すぐ清算が始まるんですよね、などと聞いていましたが、文部科学省の担当者は時期についてははっきりと話していませんでした。

過去の事例を見ると、最高裁に特別抗告が行われて、その上で確定しています。私は以前、これについて整理して、ブログで書いたことがあるので、見て頂ければと思います。
https://www.ogasawara-church.jp/blog/20230910/2145/

①オウム真理教
1995年6月30日 解散命令の請求
1995年10月30日 解散命令の決定(東京地裁)
1995年12月19日 即時抗告棄却(東京高裁)
1996年1月30日 特別抗告棄却(最高裁判所)⇒解散命令の確定

②明覚寺
1999年12月24日 解散命令の請求
2002年1月24日 解散命令の決定(和歌山地裁)
2002年9月27日 即時抗告棄却(大阪高裁)
2002年10月4日 特別抗告(最高裁判所、棄却⇒解散命令の確定)
明覚寺については、2003年3月3日の宗教法人審議会の議事録が残っていますので、こちらも見てみたいと思います。
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/shuukyo/gijiroku/03030301.htm

オウム真理教の場合は、特に短いですが、これは明確な殺人事件であり、放置しておくとサリンが拡散するなど大変な問題になるので、特に急いだのでしょう。
逆に明覚寺については、解散命令請求から決定まで2年1か月、即時抗告から棄却まで8か月、特別抗告のあと棄却までの期間は、宗教法人審議会の記録からは拾えませんでしたが、棄却の理由がそもそも憲法問題ではなく刑事事件なので、おそらく短期で終わったことでしょう。

ここで気を付けておきたいのは、高裁の決定に対して2例とも最高裁に対して特別抗告が行われていること、文部科学省の宗教法人審議会での書き方では、特別抗告の棄却をもって、9月27日の高裁決定が確定したと表現しているのです。

さて、即時抗告をすると、必ず執行は停止されます。つまり、現在は解散手続ができない状態です。これに対して、最高裁判所に特別抗告をしても、当然には執行は停止されません。そのままだと、解散手続きができることになります。これを評して、マスコミでは高裁決定がでると、解散手続きがすぐ始まるように言っているのです。

先日の衆議院議員法務委員会で、有田議員が文部科学省に対して、高裁の決定がでたら解散手続きが始まるんですよね、と念を押していました。それに対して文部科学省は、一般論として、解散が確定したら手続きが始まる、と答弁していました。有田議員はそれを捉えて、文部科学省も認めた、などと言っています。

しかし、それは間違いです。先ほど見た通り、高裁決定が出ても、特別抗告が行われ、それが棄却されるまで、執行はされませんでした。少なくとも、明覚寺の宗教法人審議会の議事録を見ると、そのように読み取れます。

実は、特別抗告をすると、最高裁判所は執行停止の裁判を行うことができます。必ず執行停止されるというわけではありませんが、裁判の結果が出るまで、様子をみよう、というようなものかもしれません。そうすると、即時抗告をしたのと同じように、解散手続きは行われないことになります。

民事訴訟法の条文を見てみましょう。
(特別抗告)
第336条第3項
第1項の抗告及びこれに関する訴訟手続には、その性質に反しない限り、第327条第1項の上告及びその上告審の訴訟手続に関する規定並びに第334条第2項の規定を準用する。

(原裁判の執行停止)
第334条第2項
抗告裁判所又は原裁判をした裁判所若しくは裁判官は、抗告について決定があるまで、原裁判の執行の停止その他必要な処分を命ずることができる。

信者の間でも、高裁の決定が出たら終わりだ、と焦っているような声を時々聞きます。しかし、もともとこれは予想されたことなのですから、落ち着いて対応するべきだと思います。必ずしも高裁の決定が最後ではない、ということを理解して、私たちができることをすればよいと思います。

打てる手の一つとしては、信者による行政訴訟が上げられるかと思います。今回の東京地裁決定で改めて浮き彫りになったのは、信教の自由という非常に重要な問題をもつ裁判が非公開で行われることの危険性です。その理由は、解散命令が非訟事件で行われるという宗教法人法の規定にあります。本件を訴訟事件とすることで、公開の場での審理が可能になるはずです。そして家庭連合が原告になっても、解散手続きが始まると、清算法人となってしまい、解散に関すること以外はできなくなります。訴訟人としての地位は家庭連合に残りますが、おそらく取り下げてしまうでしょう。だからこの訴訟は、信者が失わる信教の自由を訴えの利益として提訴するしかないと思うわけです。

私はこれに、前向きに取り組みたいと思っています。当面は目の前の参議院議員選挙に注力しますが、本件も視野に入れて、活動していきたいと考えます。

動画はこちら
https://youtu.be/QlIPJJDrVqg