家庭連合の解散命令決定への抗告理由書 最後は裁判官の矜持

3月25日の東京地裁による家庭連合の解散命令の決定に対して、家庭連合は4月7日に即時抗告しましたが、4月21日に抗告理由書を提出し、その要旨が公開されました。
https://ffwpu.jp/wp-content/uploads/2025/04/Summary-of-the-appeal.pdf

非常に論旨が明快で、東京地裁の決定の問題点を鋭く指摘しています。
第1 宗教法人法81条1項1号「法令に違反」
第2 国際法違反(憲法98条2項違反)
第3 コンプライアンス宣言以降の不法行為事実の認定
第4 コンプライアンス宣言の徹底とその実効性
第5 「著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる」といえるか
第6 解散命令が「必要でやむを得ない」といえるか
第7 本件の背景(拉致監禁と全国弁連等)

どの論旨も重要なのですが、中でも第3と第4がポイントだと思います。
もともと、決定書においては、文部科学省の主張としてコンプライアンス宣言前と後を分けずに、全体としての被害しか書いていません。つまり、これまでに204億円の被害が発生しているというものです。
これに対して、家庭連合が反論したのは、2009年のコンプライアンス宣言において教団が改善策を講じ、大きく成果が現れており、特に直近はそれが徹底されているから、解散は「必要でやむを得ない」ものではない、という主張です。コンプライアンス宣言の前後に切り分けるべきという主張については、東京地裁が受け入れています。
しかし、東京地裁は、コンプライアンス宣言で被害を切り分けたとしても、なお改善策が「弥縫策」であり、現在でも看過できない被害が発生していると「合理的に推定」したのです。
そこで、抗告理由書は、コンプライアンス宣言以降の改善策と効果を、地裁があえて軽視している点について、具体的な例を挙げて、徹底的に論証しているのです。実に見事だと思います。

抗告書要旨は15ページですが、本紙は200ページにもなるものだそうです。短期間で、よくそこまでまとめ上げたものだと思います。

文部科学省の全国弁連による一方的な主張に対し、家庭連合はコンプライアンス宣言で切り分けるべきだと反論し、東京地裁はその論点を受け入れました。
これは一歩前進です。しかし地裁はそれでもなお、文部科学省の主張通りに決定をしたわけです。
そして、抗告審では、さらに掘り下げて、コンプライアンス宣言後の改善策とその成果について、具体的な証拠を以て説明し、もって解散命令が「必要でやむを得ない」とは言えないことを証明したわけです。裁判の結果を覆すには、十分な論拠であると思います。

あとは、抗告審において、東京高裁の裁判長の、裁判官としての矜持によると思います。
最後は人なんです。

抗告理由書要旨は、下記の言葉で結ばれています。私は、全くその通りと思います。この部分を読んで、本日は終わりにしたいと思います。
「旧憲法下最悪の宗教弾圧事件とされる「第2次大本事件」(教祖・幹部らが治安維持法違反等に問われた刑事事件)の控訴審で,メディアに煽られ過熱する世論に抗い,法の正義に対する信念と勇気をもって逆転無罪判決を言渡した高野綱雄裁判長のような法律家としての矜持を持つ裁判官が令和の世にもいることを祈る。」

動画はこちら
https://youtu.be/9FyrhIFJYvc