日本共産党の内部留保税施策のまやかし
日本共産党と社会民主党は内部留保税という政策を掲げています。昨年12月の日本共産党の田村委員長の国会答弁にも、それが現れています。
https://www.jcp-tokyo.net/2024/1212/99338
田村委員長の主張は、大企業が賃金を抑えて利益を溜め込んでいるというようなことですが、これは全くの間違いです。
企業の財務諸表の見方を知っている人ならば、だれでもわかることですが、内部留保、別の言葉で言えば利益剰余金ですが、これは資金の調達の話です。貸借対照表の貸方、つまり右側に記載されます。資金の調達には2つの種類があって、負債と純資産、つまり自己資本で、利益剰余金はこの自己資本に該当します。
一方、資金の用途が貸借対照表の左側に記載されます。現預金や在庫、固定資産が記載されますが、会計用語では資産です。
そして、賃金というのは、財務諸表の損益計算書というものに記載されるもので、費用として借方、つまり左側に計上されます。収入から支出を差し引いたものが利益ですが、この支出になるわけです。
会計帳簿というのは、借方(つまり左側)と貸方(つまり右側)の合計は、一致しなければなりません。つまり、右側にある内部留保が増えれば、賃金を増やすことができる、ということになります。
内部留保税というのは、この自己資本に対して課税する、という話です。内部留保を増やすのは怪しからんから、これを減らせということです。財務諸表を見ればわかりますが、これは賃金を支払う原資を減らす方向に経営者の動機が働くことになります。
もし今まで通りの賃金を支払おうとするなら、売上高が増えない限り、借入金を増やすしかなくなります。しかし、企業の健全な経営のためには、できるだけ借入金を減らして、自己資本を厚くする必要があります。これは、会社経営の基本中の基本です。
つまり、日本共産党の施策は、賃金を減らすか、借入金を増やせ、と言っていることと意味が同じなのです。つまり企業の健全性を犠牲にして賃金を支払うか、健全性を維持して賃金を減らすか、どちらかの選択を迫られることになります。
どちらにしても、日本共産党の施策は、企業を弱体化させ、賃金を支払う余力を削ぐような施策です。言っていることとやっていることが、完全に逆なのです。
どうしてこんなちぐはぐな施策を思いつくのかと言えば、発想の根底に資本主義の否定があるのだと思います。要するに、資本家が資本を積み上げて、労働者の賃金を搾取している、という思いこみです。
しかし、財務諸表の簿記と、政治理念の話は切り離す必要があります。会社経営が少しでもわかる人なら、自己資本比率、すなわち内部留保と資本金の合計値である自己資本を充実することが会社経営の目的であることが、理解できるはずです。
賃金を上げるためにまずやるべきことは、企業に賃金を支払うための原資を確保させることです。そのためには、内部留保を課税して、賃金に回すための原資を奪うなどという愚策は放棄して、売上拡大策や法人税減税などの施策を積極的に進める必要があります。
日本の中小企業が現在直面している危機は、コロナ特例融資などによって借入金を増やした結果、返済できずに資金繰りが悪化していることです。多くの会社が債務超過、即ち内部留保がマイナスとなり、その額が資本金すら超えている状態です。
日本共産党の内部留保税は、資本金10億円以上の企業に限定されていますが、それでも資金繰りに苦労している大企業はたくさんあるのです。共産主義思想を出発点としたこのような間違った施策は、直ちに撤回すべきと思います。
動画はこちら
https://youtu.be/48PuhBt43Xk
