宗教法人の解散命令決定の手続きは非訟事件であり非公開 信教の自由の保護において問題がある

家庭連合の解散命令の決定が下されましたが、これは非訟事件であって、訴訟事件ではありません。この点はわかりにくいですが、宗教法人の解散という重要な事件についての、公正・公平な審理という観点から重要なので、説明したいと思います。
なお、冒頭に申し上げますが、私は行政書士であって弁護士ではありませんので、民事訴訟法、非訟事件手続法などの専門家ではありません。あくまで一般の国民として、個人的な法律解釈を申し上げるものですので、専門家の方のご指摘があれば、ありがたいと思います。

宗教法人法第81条第7項には、「解散命令の裁判に関する手続きについては、非訟事件手続法の定めるところによる」と書かれています。訴訟事件ではありません。
非訟事件の手続き上の違いを4点ほど述べます。

まず、非訟事件の手続きは、非公開で行われます。
第三十条 非訟事件の手続は、公開しない。ただし、裁判所は、相当と認める者の傍聴を許すことができる。
浜田聡参議院議員が、3月13日の参議院総務委員会で、家庭連合の解散は、トランプ政権における信教の自由を重視している政策をとっており日本にも影響があると思われる点、文部科学省が裁判所に証拠として提出した陳述書に虚偽捏造がある点を質問しましたが、文部科学省の回答はいずれも、「解散請求につきましては、非公開の非訟事件として、東京地裁に係属しており、裁判において旧統一教会に関する主張に逐一コメントすることは差し控えさせて頂きます」というものでした。
しかし、憲法82条第2項後段には、こう定められています。
「八十二条 政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となっている事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。」
憲法20条の信教の自由に関する条文も、この憲法第三章に含まれます。
この憲法の規定からすると、宗教法人の解散命令という、まさに憲法20条そのものに関する裁判は、公開するというのが、日本国憲法の考え方だと思いますが、残念ながら宗教法人法では、そうなっていません。

2番目に、非訟事件の裁判は、判決ではなく決定で行われます。
第五十四条 裁判所は、非訟事件の手続においては、決定で、裁判をする。」
今回の解散命令についても、裁判の結果は「決定」となっています。よく、「解散命令の判決が出された」と表現されていますが、あくまで「決定」です。

3番目に、非訟事件の裁判は決定で行われるために、口頭弁論が必須となっていません。
民事訴訟法に、このように書かれています。
第八十七条 当事者は、訴訟について、裁判所において口頭弁論をしなければならない。ただし、決定で完結すべき事件については、裁判所が、口頭弁論をすべきか否かを定める。
つまり、口頭弁論が行われなくとも、当事者は文句を言えません。
一般的に、私たちの裁判のイメージは、被告と原告が、裁判官の前でそれぞれの主張を行い、互いの弁護士が当事者尋問や証人尋問を行うというものです。今回の場合、裁判所の裁量で当事者の審問や証人尋問は行われましたが、思いますが、上記の通り非公開であるため、十分であったかどうかを外から確認することができません。

最後に、「決定」の執行力は確定前でも発生します。即時抗告によって、執行力を失わせることができるに過ぎません。
即時抗告が棄却された場合、特別抗告を行うことも可能ですが、特別抗告は憲法上の問題など受理のための条件があり、必ずできるとは限りません。
そして、特別抗告は確定遮断効がないので、最高裁が執行停止の裁判をしない限り、執行力を失わせることができません。
今回の解散命令であれば、即時抗告前の現時点では、文部科学省は直ちに解散することが可能な状態です。もっとも、家庭連合側は即時抗告することを明言しており、そうすると執行力が失われて、解散を執行しても無効になりますから、直ちに解散はしないとは思います。
それに対して「判決」の場合は、確定しなければ執行力は発生しません。訴訟事件の場合、控訴、上訴と三審制が保証されているので、上訴された場合は最高裁が裁判するまでは確定せず、執行力が発生しないのです。

以上見たように、判決なのか、決定なのかは、大きな違いがあると思います。
今更言ってもしかたないことではありますが、宗教法人の解散という重要な事件について、宗教法人法で解散命令の手続きを非訟事件として規程しているのは、信教の自由の保護の観点からは、問題があると思います。
もちろん、文部科学省の手続き自体は、宗教法人法の規定通りに行っていますので、その点について異論を差しはさむものではありませんが、結果として重要な決定が国民の眼に見えない形で行われていることは事実です。家庭連合を解散させようとする文部科学省が、国会での質問に対してさえ、非訟事件であることを楯に、回答を拒否しているのは、その典型です。
私は、宗教法人審議会の議事録の開示請求を行っていますが、未だに最終的な決定がなされていません。
このような不透明な手続きでの宗教法人の解散命令は、やはり問題があると言わざるを得ません。

動画はこちら
https://youtu.be/lpOr9LmfsUI