家庭連合解散命令 東京地方裁判所による空中戦は、法治国家の基本原則の放棄

3月25日、東京地方裁判所は家庭連合に対して解散命令を決定いたしました。

その根拠は、法的には宗教法人法第81条第1項第1号の「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をした」における「法令に違反」について、刑事事件のみならず民事事件も含まれる、という法令解釈をしています。この点は、これまで報道などでも知られていることですが、今回東京地方裁判所は、新たな解釈基準を設けました。それが、裁判上の和解や示談についても、「合理的な推測として、不法行為が成立すると認めることができる」というものです。

刑事事件も民事事件も、裁判所が行う裁判を前提としています。裁判は、法と証拠に基づいて行われるので、被告も原告も、きちんと証拠を揃えて、自らの主張を証明するという、地道な作業を積み上げます。今回の解散命令の決定も、訴訟ではなく非訟事件ではありますが、裁判ですから、申立人(文部科学省)も利害関係人(家庭連合)も、証拠を積み上げました。福本弁護士が言うところの、地上戦を行ったわけです。

ところが、文部科学省が集めた証拠は、古いものばかりでした。集めた証拠は、平均して30年前です。特に2009年以降のコンプライアンス宣言以降のものは、ほとんどありません。具体的に言えば、訴訟32件のうち、コンプライアンス以前のものは、31件、原告168名、返金額約17億8406万円ですが、コンプライアンス以降は1件、原告3名、返金額1761万円です。これでは、継続性を認める訳にはいきません。

そこで文部科学省は、陳述書を準備しました。特に、コンプライアンス宣言以降のものが重要なので、念入りに準備しました。全部で19件のうち、1件は先ほどの訴訟のもので、あとの18件は、新たに集めたものです。

ところが、この陳述書は、ほとんどが職員が書いた作文で、本人が内容を知らない、書いた自覚のない、甚だしくは違う宗教団体の信者のものなどでした。福本弁護士は、丁寧に反証を積み上げて、裁判所に提出しました。まさに泥臭い、地上戦です。

この陳述書の虚偽捏造は、文部科学省が犯した、決定的な失敗です。国が証拠を捏造するなど、ゆるされるべきではありません。私が刑事告発したのも、まさにその点です。

このままでは文部科学省は負けてしまいます。そこで裁判所が繰り出してきた離れ業が、「裁判外の示談であっても、合理的な推測として、不法行為が成立すると認めることができる」という理論です。証拠がなくとも、事実認定できるなんて、ありえません。この極端に飛躍した論理を、福本弁護士は、「空中戦」と称したわけです。

示談というのは、平和な話し合いです。「すみません、生活が苦しいんで、これまでの献金返して下さい」という申し入れも、示談です。実際に、私の地元の教会でも、そういうことはありました。教会は返金に応じていましたが、私たちの献金が、返金に回されるということに対して、違和感を感じていました。しかしこれも、「不法行為」にカウントされてしまうわけです。

こんなことを認めたら、ほとんどの宗教法人が「不法行為」をやっていることになります。

「空中戦」の問題は、戦争被害が広がることです。具体的な証拠がないのですから、的を絞れません。例えは悪いかもしれませんが、戦前の東京大空襲や、広島・長崎の原爆を思い起こします。無実の市民まで巻き込んで、大きな被害が発生します。平和な話し合いが不法行為にされたら、だれも安心して話し合いなどできなくなってしまいます。

有罪にするには、きちんと、一つ一つ立証するべきです。それが福本弁護士がいうところの、地上戦です。それ以外の方法によって、誰かを有罪にしてはなりません。それが法治国家のきまりです。東京地裁がとった方法は、法と証拠のみによって裁くという、法治国家の大原則の放棄であり、罪刑法定主義の否定です。

動画はこちら
https://youtu.be/Jg3iFxRQKvA