稲垣良典氏著 トマス・アクィナス「神学大全」
稲垣良典氏著「トマス・アクィナス 神学大全」という本を読んでみました。
『神学大全』は、13世紀に書かれた中世ヨーロッパの代表的な神学書であり、著者のトマス・アクィナスは、13世紀のスコラ哲学を代表する神学者・哲学者です。
トマスは1265年頃から『神学大全』の執筆を開始し、1273年12月6日まで執筆を続けましたが、完成を目前にして執筆を中断し、そのまま1274年に亡くなりました。弟子たちが残りの部分を完成させました。
『神学大全』は、以下の3つの主要部分から構成されています。
第一部:神について(119問):神の本質、三位一体、創造、天使、人間など
第二部:人間について(303問):人間の行為、情念、習性、美徳と幸福、悪徳と罪、法など
第三部:キリストについて(90問):キリストの生涯、秘跡など
各部は、「〜であるか?」という問いに対して、異論、反対異論、主文、解答という順序で論が進められます。教父思想、アリストテレス哲学、新プラトン主義、ローマ法学など、中世の学問を広く取り入れた集大成となっています。中世哲学・神学の最高峰とされ、キリスト教思想のみならず、西洋哲学全体に多大な影響を与えました。
私は最初、これを全部読んでみようと思いましたが、すぐにそれが不可能であることがわかりました。和訳文だけで、45巻もある大作なのです。これは無理だと言うことで、代わり解説本を読んで、概要だけでも理解しようと思った次第です。しかし、解説本ですら難解でした。稲垣良典氏は、神学大全を翻訳した神学者の一人ですが、正直よく理解できたという自信がありません。
神についての存在については、この世の全てのものは、因果律に従うが、唯一の例外が第一原因であり、それが神だとしています。
また三位一体については、神という唯一の存在が、3つのペルソナ(人格)として現れたとしています。
人間の罪については、罪を認識し、悔い改めることができること自体が、神の恩寵による、ということのようです。
なんとなくわかったのは、神とキリスト、罪と贖罪という神秘的な存在を、アリストテレスの哲学を取り入れて、論理的に解説しようという挑戦であったと思います。それをトマス・アクィナス自身がどのように評価していたのかは、わかりません。途中で執筆をやめたということは、どうしても解けない謎のようなものがあったのかもしれません。
それでも、キリスト教が、ギリシア哲学という論理を重んじる学問を取り入れて、知的に整理したことは、西洋の文化に対して多大な影響があったことは、理解しておく必要があるように思いました。
動画はこちら
https://youtu.be/fic-ycqEYaw
