後藤徹vs鈴木エイト訴訟 判決文の公開

後藤徹氏の鈴木エイト氏に対する名誉棄損の損害賠償請求に対する判決につき、判決文が公開されました。
これについては、すでに浜田聡参議院議員が2月2日の午前1時頃、動画で紹介されています。判決文の公開からわずか3時間ぐらいではないかと思いますが、早いですね。名誉棄損の対象となった5つの発言と、それぞれに対する審理の経緯、結果を整理されていますので、是非ご覧下さい。リンクを貼っておきます。

ここでは、少し踏み込んで整理してみたいと思います。

判決文は、まず2015年11月の、東京高等裁判所の判決を取り上げています。
「原告は、平成2 3年、本件教団の信者である原告が、原告の親族、本件教団の信者の脱会を組織的に進めている者らの共謀によって拉致され、監禁され、棄教を強要され、全身筋力低下、廃用性筋萎縮等の障害を負わされたなどと主張して、不法行為に基づき、同人らに対し、損害金合計2億0 1 6 1 万8 5 27 円の支払を求める訴え(以下「別件訴訟」という。)を東京地方裁 判所に提起し、平成2 6年1月2 8日、同裁判所はその主張の一部を認める 判決(以下「別訴地裁判決」という。)を言い渡した(甲1 3の1)。 この判決に対し、当事者双方が控訴したところ、東京高等裁判所は、同年 11 月13日、認容額を合計2 2 0 0万円へと増額する判決(以下「別訴高裁 判決」という。)を言い渡した(甲1 3の2)。同判決は、上告棄却及び上告 不受理により確定した。」
これが、この裁判のキーポイントとなります。

そして、判決文は、名誉棄損の対象となった鈴木エイト氏の発言について、列挙しています。

①2013年3月13日 やや日刊カルト新聞
「‘‘役者魂”見せつける後藤氏」との小見出しの後の本文に、「“後藤ケース’'は、脱会説得に応じず、逆に“氏族メシア”どして家族を説き伏せるためにマンションに留まり、居直った末に果てにニート化してただの “引きこもり’'となった男性信者が、役柄を“転換”し“拉致監禁に耐え切った英雄”として統一教会内でスターダムにのし上がったというだけの話だ。実際のところ、後藤氏は引っ込みが付かなくなっているのではないか。記憶の改変が起こる土壌は全て整っている。」

②2015年10月15日 やや日刊カルト新聞
「統一教会(家庭連合)名称変更記念イベント密着リポート」との大見出しを付け、本件教団の名称変更記念イベントに関する記事を掲載し、配信した。 同記事は、被告が同イベントの会場の外で行った取材に基づくものであるが、その中で、本文に、「改めて入場する信者を観察すると・・・正体隠し伝道を行なっていた勧誘員の姿も多数確認できた。信者内では有名人の後藤徹氏も本紙主筆が声を掛けると手を挙げて応答。」との記述が記載されており、続けて貼付された原告の写真のキャプションとして、「1 2年間に及ぶ引きこもり生活の末、裁判で2 0 0 0万円をGETした後藤徹・拉致監禁強制改宗被害者の会会長 本紙主筆の呼び掛けに快く応じる」

③2022年8月12日 「情報ライブミヤネ屋」
同番組の中で、別件訴訟の話題となり、司会者から、その取材をしたことを尋ねられると、被告は、「そうですね。裁判の過程でも、統一教会側が信者を大量動員して、もう傍聴席を埋め尽くしたっていうことがありました。
そういうなんか異様な熱気に裁判所が流されたって点もありまして、この原告自体も、もうほぼ引きこもり状態の中、いつでも出ていけるような状態、自分より体格が劣るような母親と 2 人きりの時であっても全く出ていかなかったこともあって、外形的にはほぼ引きこもり状態なのではないかと思われるんですが、そういう訳でちょっとまあ全体的になんか変な感じの流れの裁判だったなと思いますね。」と発言した。

④2023年7月30日 「信者の人権を守る二世の 会」第3回シンポジウム
ジャーナリストから、「後藤さんは1  2年5カ月監禁されてました。それについて鈴木エイトさんは引きこもりと言った。これはどうしてなんでしょうか。」と質問されたのに対し、「どうでもいいです。ご自由に受け取ってください。はい、以上です。」と発言した。

⑤2023年8月1日 Xのポスト
「統一教会は組織的な正体隠し勧誘から伝道目的を隠したまま一般市民を偽装教化施設に通わせ、思考の枠組みを変容させ信者を“生産”してきた。そんな反社会的団体からの脱会を望む家族と当該信者の話し合いを教団側が「拉致監禁!強制棄教だ!」と被害者面でアピールしているだけ。」(以下「本件発言⑤前段」という。)、「そんな反社会的団体による「被害者アピール」は取り上げる価値もなく「どうでもいい」こと。一般市民の信教の自由(信仰しない自由)を侵害してきた教団が家族からの取り組みを「強制棄教」と非難すること自体がおかしなこと。」

さらに判決文では、名誉棄損による不法行為がどのように成立するかについて、説明しています。公開された判決文には、ここが省略されていますが、ポイントを書くと、次の通りです。

①名誉毀損の不法行為は、問題とされる表現が、人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価を低下させるものであれば、これが事実を摘示するものであるか、又は意見ないし論評を表明するものであるかを問わず、成立し得る。

②事実を摘示しての名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、摘示された事実がその重要な部分について真実であることの証明があったときには、上記行為には違法性がなく、仮に上記証明がないときにも、行為者において上記事実の重要な部分を真実と信ずるについて相当の理由があれば、その故意又は過失は否定される。

③ある事実を基礎としての意見ないし論評の表明による名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関ずる事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、上記意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったときには、人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り、上記行為は違法性を欠くものというべきであり、仮に上記証明がないときにも、行為者において上記事実の重要な部分を真実と信ずるについて相当な理由があれば、その故意又は過失は否定される。

つまり、事実適示型であるか、意見論評型であるかに係わらず、当該発言について、①公共の利害及び公益性、②社会的評価の低下、③真実性または真実相当性、この3点について、判決は5つの発言についてそれぞれ評価しました。

発言①について 2013年ブログ 「ニート化してほぼ引きこもり状態」
事実適示の有無及び適時された事実 ○
社会的評価の低下 ○
真実性 ×(2015年裁判により)
「原告の行動の自由が違法に制約され続けていた(認定事実(1)のイ)のであるから、原告の自らの意思に基づく滞在としての「引きこもり」ではなかった言わざるを得ず」
真実相当性 ○(2015年裁判前だから)
結論:名誉棄損の不法行為を構成しない

発言②③について ②2015年ブログ 「12年間に及び引きこもり状態」、③2022年 バラエティ「ほぼ引きこもり」
事実適示の有無及び適時された事実 ○
社会的評価の低下 ○
真実性 ×(2015年裁判により、発言①と同様)
真実相当性 ×(2015年裁判後だから)
結論:名誉棄損の不法行為を構成する。

発言④⑤について ④2023年シンポジウム 「どうでもよい」、2023年Xポスト 「被害者面でアピール」
社会的評価の低下 ×
その余の点は検討するまでもない。
結論:損害賠償請求は理由がない。

やはり、ポイントとなるのは、2015年の東京高等裁判所で、「原告の親族、本件教団の信者の脱会を組織的に進めている者らの共謀によって拉致され、監禁され、棄教を強要され」たことが、不法行為として認定された部分だと思います。

これにより、「ひきこもり」即ち自分の意志で監禁現場に滞在したという真実性、真実相当性が全て否定され、拉致監禁は違法行為であることが、東京地裁により再度確認されたことになります。そして、拉致監禁を「保護説得」と表現する詭弁も、そもそも自分の意志で滞在していない以上、やはり違法行為であるということになります。
今後とも、拉致監禁による強制棄教については、違法であるという点につき、世の中に訴え続けていきたいと思います。

動画はこちら
https://youtu.be/eguVGrL2S6Q