シュレーディンガー 「生命とは何か」物理的にみた生細胞

本屋を歩いていて、シュレーディンガーの「生命とは何か」という本を見つけたので、読んでみました。
エルヴィン・シュレーディンガーは、オーストリア出身の理論物理学者で、量子力学の発展に大きく貢献した人物です。1926年に波動方程式を提案し、電子や光子などの微視的な粒子が波として振る舞う性質を数学的に表現しました。
そしてその物理学的な視点から、生命の本質に迫ろうとしたのが、1944年に発表されたこの本です。生物学と物理学の橋渡しとなり、後のジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックによる遺伝子の二重らせん構造の発見につながります。

おもしろいなと思ったのは、シュレーディンガーが、生命がエントロピーの増大に逆らって秩序を維持する能力を持つことを指摘した点です。エントロピーとは、物質やエネルギーの無秩序さを表す指標ですが、熱力学の第二法則では、エントロピーは不可逆的に拡大するとされています。ところが生命は、遺伝子を通して、何世代にもわたって同じ形質を受け継ぎ、秩序を維持しているわけです。

学生時代に、原理講義を受けた時、講師が神の存在証明として、この話をしました。つまり、物質は時間とともに崩壊して元には戻らない、コーヒーにミルクを入れてかき混ぜると拡散してしまい、もとのコーヒーとミルクに戻すことができない、それにも関わらず生命が維持されるのは、神の力が働くからである、というわけです。

しかし、シュレーディンガーは、ミクロの世界ではエントロピーは拡大するが、固体になると別の挙動をする、その例が機械仕掛けの時計で、これは一定期間秩序を維持する、生命は遺伝子という分子を通して、秩序を維持する仕組みを持っていると説明します。

私は量子力学も生物化学も全くわかりませんが、深い世界では通じるものがあるのかもしれません。エントロピーで神の存在を証明するのは難しいのかもしれませんが、機械的な物理の世界が、生命という神秘の世界に通じるとしたら、それ自体が、神が創造した緻密な計算によるものかもしれません。

動画はこちら
https://youtu.be/sQG0TGlGQr8