中国の国家的ハニートラップ 在上海日本国総領事館員自殺事件(2004年)
2004年5月、在上海日本国総領事館に勤務していた46歳の男性領事が自殺するという悲劇的な事件が発生しました。
この事件は、中国当局によるハニートラップを用いたスパイ活動の疑いが強く持たれています。
「スパイ防止法」制定促進サイトに、この記事が掲載されています。
https://www.spyboshi.jp/honeytrap/
また、Wikipediaに、詳細が記載されています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8A%E6%B5%B7%E7%B7%8F%E9%A0%98%E4%BA%8B%E9%A4%A8%E5%93%A1%E8%87%AA%E6%AE%BA%E4%BA%8B%E4%BB%B6
この領事は、総領事館と外務省の間の通信事務を担当する通信担当官で、機密性の高い文書を扱う重要な立場にありました。彼は上海市内のカラオケ店に出入りしており、そこで中国人女性と親密な関係になったとされています。
中国当局は、この関係を利用して領事に接触し、スパイ活動を強要したと考えられています。領事は脅迫を受け、日本の機密情報の提供を迫られたようです。
苦悩の末、領事は総領事宛ての遺書を残して自殺しました。遺書には以下のような内容が記されていました。
「一生あの中国人たちに国を売って苦しまされることを考えると、こういう形しかありませんでした。日本を売らない限り私は出国できそうにありませんので、この道を選びました」
外務省は、この事件を秘匿していましたが、2005年12月28日に週刊文春がこれを暴露する報道をしました。外務省はそれを受けて、2005年12月31日、中国政府に対して抗議を行いました。
外務省は、中国当局の行為が「領事関係に関するウィーン条約上の接受国の義務に反する遺憾な行為」であったと指摘しています。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/17/rls_1231a.html
中国政府は日本側の主張を否定し、「中国のイメージを落とそうとする日本政府の悪質な行為」だと反論しました。
http://fukuoka.china-consulate.gov.cn/jpn/xwdt/200601/t20060104_5562379.htm
このことについて、当時の在上海日本国総領事であった杉本信行氏が、自叙伝的な著書「大地の咆哮」で、次のようなことを書いています。
「2004年春上海の日本総領事館で一人の館員が、このままでは国を売らない限り出国できなくなる」との遺書を残して死んだ。わたくしはその時の総領事であった。上司として館長として、彼を守れなかったことへの無念さは、今も変わることがない。」
杉本元総領事は、日中関係を改善するために、粉骨細心努力してきた方です。部下が、人間の弱みに付け込むようなハニートラップで自殺するという事件に接し、その思いは裏切られたような思いだったに違いありません。その心中を察すると、言葉もありません。
私は当時、仕事で上海に滞在していました。今からすると、なんと恐ろしいところにいたのだろうと、思います。
彼が自殺したのは、領事館内です。人は、自分が大切にしている場所では、自殺などしないはずです。それでも領事館内で自殺したのは、おそらく、他の場所だと、遺体を勝手に処理されてしまうということを恐れたからではないでしょうか。そして残念なのは、外務省は、週刊文春に暴露されるまで、この事実を国民に知らせず、秘匿していたことです。遺族の感情に配慮したとしていますが、国家安全保障上、極めて重要な問題です。果たして、政府内で報告・共有されていたのでしょうか。
この事件は、中国によるスパイ活動の手法としてのハニートラップの存在を改めて浮き彫りにしました。日本の外交官や政府関係者に対し、海外での行動に細心の注意を払う必要性を強く認識させる結果となりました。
日本にはスパイ防止法がありません。このようなことを防ぐためにも、日本の安全と国民を守るために、スパイ防止法は必要だと思います。
動画はこちら
https://youtu.be/o57AzVCe2Xs
