解散命令請求の根拠を民法とする3要件「組織性」「継続性」「悪質性」はどこへ行ったのか
宗教法人の解散命令の要件である「著しく法令に違反」という法令には、刑法だけではなく民法も含まれると、2022年10月19日に岸田前首相が解釈変更したことは、よく知られています。
しかし、その際に基準として示された「組織性」「継続性」「悪質性」については、解散命令請求において無視されたことは、あまり指摘されていないように思います。
まず、岸田首相は、参議院予算委員会で、民法上の違法行為でも「組織性、悪質性、継続性」の3要件を満たせば解散命令を請求できるという解釈を示しました。
https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=121015261X00120221019&spkNum=14¤t=-1
これに対して、家庭連合は、「組織性」「継続性」「悪質性」はないと、再三にわたって主張しています。2023年2月6日の文部科学省に対する申入書が公開されています。
「3 「組織性・継続性・悪質性」の3要件を満たさない
(1) 組織性なし
家庭連合に関する裁判例(民事・刑事)のいずれも、組織性を認めていない。「組織性」の判断基準は、「代表役員等(幹部)が信徒等の行為を利用した」関係にあることである(オウム真理教高裁決定)。家庭連合のどの幹部も信徒の行為を利用していない。
しかも、貴省が「組織性」の理由として挙げた使用者責任に関する22の裁判例を分析すると、その約半分で(金額で48%、項目で50%)、家庭連合が勝訴している。
(2) 継続性なし
2009 年の家庭連合のコンプライアンス宣言後、ほぼ紛争は発生していない。献金裁判の数は、2009 年以前の165 件から、4 1分の1の4件(敗訴金額では287 分の1) に減少し、しかも、2016年3月以降の最近7年間、裁判は1つも提訴されていない。
(3) 悪質性なし
貴省は、使用者責任の裁判22件で家庭連合が14 億円敗訴したことを悪質性の理由として挙げたものの、11億円は家庭連合が勝訴している。」
https://ffwpu.jp/news/4059.html
そして、7回にもわたって質問権を行使したにもかかわらず、「組織性」「継続性」「悪質性」を立証する根拠が集まっていないことが、表面化しています。2023年7月5日の東洋経済の記事です。
「文化庁が解散命令請求の可否を判断するには教団の不法行為の「組織性、悪質性、継続性」を証明する必要がある。3つの要素のうち悪質性と継続性は立証可能でも「組織性」を裏付ける根拠が足りていない。教団側の不法行為を認めた22件の民事訴訟判決のうち、20件は信者に対する使用者責任を認めたにすぎず、教団の組織的関与を裏付ける証拠は集まっていない状況だ。」
https://toyokeizai.net/articles/-/676580
それにも関わらず、文部科学省は、2023年10月13日に、解散命令請求を行いました。そしてその理由として、「組織性、悪質性、継続性」については基準も示されないところか、その文言すら登場しませんでした。盛山元文部科学省大臣の記者会見の際に配布された資料が、文化庁のHPに掲載されているので、下記します。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/shukyohojin/pdf/93975301_01.pdf
あれだけ、「組織性」「悪質性」「継続性」と騒いでいたのに、基準どころか文言すら消えているのは、どういうことでしょうか。
文部科学省という行政庁が行うかぎり、この解散命令請求は、公権力の行使であり、行政処分です。そして、不利益処分に対しては、処分基準を予め具体的に定めておく必要があります。
https://laws.e-gov.go.jp/law/405AC0000000088#Mp-Ch_3-Se_1
しかし、今回の解散命令請求は、この基準が無視されてしまったのです。要するに、政治的に解散命令ありきで質問権が行使され、基準なんかどうでもよい、ということです。
こんないい加減な宗教行政の前例が作られてしまえば、日本の宗教団体は、安心して信仰を守ることなどできなくなってしまいます。とても恐ろしいことではないでしょうか。
動画はこちら
https://youtu.be/brGD7j4k6Kc
