統一協会(家庭連合)信者の救出 : 拉致監禁の手法が明らかに
「全国原理運動被害者父母の会」(以下、父母の会)が編纂した、「統一協会(家庭連合)信者の救出 マインドコントロールの実態と救出」を読みました。この本は2019年7月26日初版発行となっていますので、割と最近の本だと思います。
全国原理運動被害者父母の会というのは、初代会長が本間テル子氏で、一貫して家庭連合の信者の親たちに対して、家庭連合は信者をマインドコントロールされて、自分の意思を失い、社会的犯罪をさせられている、だからそこから救出するのは、親の義務だ、と親を説得するのです。
そしてこの本には、その「救出」とは拉致監禁であると本編には書いていませんが、掲載された記事から、それが明らかです。以下に解説します。
まず、子どもが統一教会に入会したら、「まず父母の会に連絡してください。その際、本人に直接聞いてはいけません」と注意されます。(P50)
そして、親に対して、いかに統一教会が社会的犯罪を行っており、それが統一教会の教義からくるものであり、マインドコントロールの手法であるか、ということを説明します。(P62-P121)
原理講論の間違い、という点については、アダムとエバによる堕落から婚前交渉の禁止だとか、アベルとカインによる組織の絶対命令だとか、そんなことが書かれています。
なんと、「殺人を正当化する手法」などということまで書いてあります。(P110)これはモーセがエジプト人を殺すことを持って出発のための摂理とされた部分を原理講論が引用していることを指摘しているのですが、統一原理に殺人を肯定するようなものはありません。これは、オウム真理教と家庭連合のイメージをだぶらせるために追記しているのでしょう。
教義に関して、いかにもマインドコントロールの手段であるかのように説明した後、父母の会は、親を説得します。ここに、母親が父親に対して、「救出」をするように説得するシーンが事例として紹介されているので、少し長いですが引用します。 (P119)
「お父さん、私の話を真剣に聞いてください。お父さんはいつまで逃げている気ですか。私たちの子供が犯罪者になってしまい、今この瞬間にも善良な人々を騙して罪を犯しているのですよ。あなたはそれを平気でいられるのですか。親として、社会人として、それを見過ごしておきますか。黙認しているということは、犯罪の共犯者ということになりますよ。
あなたがこのまま逃げているなら、私は一緒に生活して行くことはできません。私はあなたと離婚しようと思います。そして私と残りの家族で救出に立ち向かおうと考えています。
お父さん、今我が子は地獄の底に閉じ込められているのですよ。地獄の底に居る我が子を引き上げる時、燃えさかる火の中に手を差し伸べるのですから、当然火傷をします。しかし、それを恐れていたらいつまでたっても地獄から救えませんよ。お父さんは火傷するのが怖いということがよくわかりました。わが子を地獄の底に放置して何もしないということは、あなたに愛も勇気もないということです。
動物だって我が子を外敵から守るために命をかけて戦うのですよ。あなたは動物以下なのですか。統一教会は人間は堕落したために万物以下になり下がったと教えていると会で学びました。それがぴったりと当てはまっているではないですか。また統一教会では文鮮明夫妻こそが真の愛を持って真の家庭を築いて、私たち両親のことを偽りの愛を持って偽りの家庭を作っていると教えていると会で学びましたが、こんな教えを絶対に認めたくないけど、お父さんの現状を見ると悔しいけどあっていることになりますよ。我が子の救出を放棄するということは、協会の教えを黙認しているということになるのです。
子供は心の底ではきっと私たちの救いの手を待ち望んでいるのだと思います。救えるのは血を分けた私たち家族だけです。お父さん今一度親とは何か家族とは何かを心から考えてみてください。」
これは、この母親がそっくりそのまま、被害者の会から説得言葉なのでしょう。なぜそう思うかと言えば、反対している私の両親が、そんなことを言っていたからです。私の両親は、私を拉致監禁することはありませんでしたが、こう言っていました。「おまえは犯罪者の共犯者になってしまう」「親は偽りの家庭を築いている」などなどです。私はこの本を読んで、なるほどと思いました。こんな風に煽られれば、親は拉致監禁に対する良心の呵責というストッパーを外され、正義心から実行してしまうのでしょう。なんとも恐ろしいトークではないでしょうか。
さて、冒頭に書いたように、この本の本編には、肝心なことが書いてありません。それは、ここで言う「救出」というのが、拉致監禁のことである、ということです。しかし、本の最後に、救出されたという元信者の証言が掲載されていて、それを読むと、救出=拉致監禁であることがはっきりとわかるのです。少し長いですが、ここも引用します。
中山啓子さん(仮名)の証言しています。(P225)
○家族との話し合いが始まった
私は家にも帰らず連絡も家族からは取れず、どこにいるかもわからない状態だった。
<交錯する気持ち>
どうしたらよいですか?早く逃げなくちゃ。でも逃げられないです。どうしましょう。必死で祈り続ける。現実を聞き入れたくないのと、見たくないのと、生理的に受け付けないのとで、時折脱力してしまう。どうせ反牧か改宗屋の類の人なんでしょ!?私をひっくり返そうと思っているに違いない。家族はその人の指示で隔離しようとしている。サタンの手には乗らないぞ。
必死に訴える家族の様子を見て、反牧では…ない…かも…
トイレ休憩所では、あのタクシーに乗ろうかな?運転手さんにとにかく走ってもらって…、お金はないけど本部まで行ったらなんとかなるし…、そうしたら後を追いかけてくるだろうな。皆、悲しむだろうな…、お母さんは気が狂ってしまうだろうな、ドアが開く、今だ!でも体が動かない、勇気がない。
○共同生活の開始
逃げようと思ったらいつでも逃げられるよね。と、言い聞かせる。緊張…
「いい部屋だね。もっと狭くて暗い部屋かと思ってた。テレビやラジオもないし、何もなくて、今までと同じ雰囲気で嬉しい。あっ(袋を見つけ)ユニクロと、しまむらだ。いつも愛用してるの。すごく嬉しい!」なんだ、普通の部屋結、構明るい。聞いていた保護部屋は暗くて一人ぼっちのはずなのに、違う。おかしいなあ…、やっぱり反牧じゃないのかな?服にもお金かかってないみたいだし、安心。みんなでここからこれからここに一緒に住むんだなぁ。一人じゃないんだ。なんだか楽しみもホーム生活そのものだ。皆大丈夫かな!? 私は何もない生活には慣れているけど、みんなは退屈するだろうな。よかった、質素な生活に慣れていて、訓練受けておいて。裕子が「み言葉」もあると言う。え、ほんと?聖書だけじゃないの?(なぜなら反牧では聖書しか渡されず、ひたすら牧師が聖書を読むだけだと聞いていたため)。
「すごい、こんなに沢山。「罪と蕩減復帰まで…」、一体竹内さんて何者?ももしかして、とても原理に詳しい人?これだけみ言葉があれば絶対、信仰が保てる。神様、すごいです。反牧じゃない。信じられない。家族復帰(家族を伝道し、統一協会に導くこと)を頑張ろう!でも、あまりにもできすぎ?… まだ油断はできない。ご飯は…断食という手もあるけど。
まさに、拉致監禁そのものです。救出とか、保護部屋などという言葉が出てきますが、要するに信者を拉致して部屋に閉じ込め、脱会の説得を延々と続けるのです。
表現は巧みにごまかしていますが、父母の会自身が、拉致監禁を「救出」という名のもとに親に教唆していること、そして親がそれを実行している実態が、この本から明らかです。こんなことが日本で横行していることを、許してはなりません。