宗教法人の解散命令の結果、教会の資産はどうなるか
先日、ひかりの輪 上祐史浩代表のトークイベントに参加し、家庭連合の信者ですと言って上祐氏にご挨拶をした際、解散命令についてどう感じているか聞かれました。
解散されれば、資産は処分されて礼拝する場所がなくなり、牧師も解雇され、全てを失う深刻な事態だとして深刻に受け止めていると答えました。
上祐氏は、解散されても被害者などに弁済した後は、規則にもよるが、土地や建物が残れば信者に分配できるから、それで続ければよいのではないか、とのご意見でした。この点、Xでも投稿されていましたので、私の見解を述べます。
まず、解散命令は決定されただけでは清算の手続きには入らず、確定する必要があります。家庭連合は決定後、即時抗告、特別抗告を行うでしょうから、確定まで数年を要します。オウム真理教の場合は決定から確定まで7ヶ月と短かったですが、明覚寺の場合は2年3か月です。家庭連合の場合は法人の規模も大きく、解散命令請求の根拠も5000件と膨大なことから、確定まで相当長期化するでしょう。
特別抗告も却下されると、解散命令が確定します。そうすると、家庭連合は清算法人に移行し、代表役員は退任して清算人が選定されます。つまり、田中富弘氏は家庭連合の会長ではなくなります。清算法人は清算に係る事業しかできなくなります。礼拝や献金など、宗教法人の目的となる行為は、清算業務と関係ないので、家庭連合として行うことはできなくなります。清算業務に関係ない職員は解雇されます。給与の支払いは、清算財産を減らす行為となるからです。
また、礼拝の建物としては、賃貸物件も少なくありません。これは家庭連合名義で場所を借りている場合ですが、賃貸契約には、通常解散時などの契約解除条項が入っているのが通例ですから、賃貸契約は解除されます。また、賃料の支払いは、清算財産を減らす行為ですから、その観点からも賃貸契約は解除せざるを得ません。いずれにしろ、礼拝などはできません。
清算業務とは、債権・債務の履行です。国税局も債権者となりますから、建物等の不動産は全て処分しなければなりません。不動産を保有したまま清算結了をすると、不動産処分益が確定できず、税金が清算できないからです。
不動産に抵当権などが設定されていた場合、これを解除しなければ処分できません。任意売却ができない場合、競売となる可能性もあります。そうなると、信者が応札できず、他人の手にわたる可能性が高くなります。上祐氏は、100億円の供託を提案したから、流動資産があるはずだとおっしゃいますが、それは清算法人ではない場合です。清算法人となって不動産に抵当権があった場合、物上保証した債務も弁済対象となりますので、清算財産からはそれらも差し引く必要があります。
解雇された職員の給与債権は、そのまま清算債権に参入されます。債権を全て弁済できればよいですが、そうでない時は、税金や給与債権など優先権がある債権を弁済した後に残った財産が、原則的には債権残高に応じて按分されます。
全ての債権者に弁済完了した後に、もし残余財産があれば、その時初めて財産帰属の問題となります。上祐氏のコメントを見ると、被害者等に弁済した後に不動産が残るのであれば、それは信者等に引き継がれると言うのですが、前述の通り、税金を確定するために不動産は処分されますから、残余財産に不動産は含まれません。ただ、残余財産は宗教法人の規則によっては信者に配当される可能性もあることは、上祐氏の言う通りで、必ず国庫に帰属するというわけではありません。(宗教法人法第50条)
また、解散命令が確定してから、清算結了までは、かなりの長い期間がかかることが予想されます。2~3年はかかるのではないでしょうか。少なくとも税金の確定には、国税庁は全ての収入・支出を精査するでしょうから、その期間は資産が凍結されます。その間、家庭連合の信者は、非常に不安定な状況におかれることとなります。礼拝施設にしても、新たな契約ができない、契約が更新できないなどの事態が想定されます。解散命令のもたらす問題は、単に清算結了後の財産分与の問題には限りません。
上記のことを全て踏まえて、私は解散命令がもたらす結果について、信者として深く憂いております。決して、問題を過大評価しているわけではありません。このことは昨年ブログにも簡単に書いておりますので、ご参考に供します。