旧統一教会 大江益夫・元広報部長懺悔録
家庭連合の元広報部長である、大江益夫氏のインタビューを、「懺悔録」という形でまとめた本を読みました。著者は元朝日新聞記者の、樋田毅氏です。大江益夫氏は、国際勝共連合渉外局長(実際は渉外局長ではなかったと指摘された)、国際ハイウェイ財団評議員、統一教会広報部長という立場で活動したと述べています。そして、教団の内情を暴露するという内容で、話をしています。いわゆる暴露本です。
これに対して、家庭連合はこの本を批判する小冊子、つまり批判本を作っています。私はこの2冊を両方とも読みました。両方読んでみると、確かにこの懺悔録は、いくつかの問題があることがわかります。
批判本には、大江氏に飲酒・喫煙の悪癖があったと言い、また信者である間もマルクス主義に傾倒していた、と書いてあります。これは大きな論点ではないと思います。また、霊感商法について大江氏が書いている内容についても批判していますが、これについては30年来マスコミが批判しているので、これも新しい論点ではありません。
私が感じる暴露本の大きな問題の一つは、朝日新聞阪神支局襲撃事件、いわゆる赤報隊事件です。これは、1987年に赤報隊と名乗る団体によって朝日新聞阪神支局が襲撃され、記者が銃殺された事件であり、犯人がわからずに迷宮入りしているものです。暴露本は、なぜかこの事件に触れて、勝共連合の武闘派が関与した可能性がある、などと言っているのです。勝共連合の武闘派など、聞いたことがありません。赤報隊事件については、樋田毅氏が統一教会と結びつけるようなことを言っていて、大江氏はこれに乗っかる形で、何の根拠もなく勝共連合の可能性があるため、懺悔するなどと言っているのです。何を考えているのか、理解できません。批判本は、この点を指摘しています。
もう一つの暴露本の大きな問題は、家庭連合信者への拉致監禁問題に、全く触れていないことです。大江氏は1992年に統一教会の広報部長になったということですから、拉致監禁の問題を認識していたはずです。新体操の山崎浩子さんが拉致監禁されて退会したことでわかるように、当時から拉致監禁は統一教会内でおおきな問題になっていました。その点に全く触れずに、家庭連合の内情を暴露すると言っても、かなり偏った内容となります。
大江氏が統一教会に入教したのは、統一原理に納得したからだと、大江氏は書いています。多くの感動もあったと思いますが、このようにして最後に暴露本を書いてしまうと、教会に残ることも困難になります。実際大江氏は、この本を書いたあとに退会届を出したとのことです。大江氏ご本人のためにも、このような暴露本を書いたことは、残念だと思います。