天皇家の存在は日本の強み
日本国憲法において、天皇家は国民の象徴と位置付けられています。しかし天皇家は、単なる象徴ではありません。実は、日本の強みの一つです。
戦前、日本の軍隊が非常に強かった背景には、日本の伝統文化である家族制度がありました。
これは戦前の民法にも規定されていて、戸籍は一族の家族単位に登録され、家族の長は「戸主」と言いました。この「家」が集まって集落をなし、郷ができたのです。
日本の軍隊は、郷を単位としていました。広島第1師団、のような形です。ふるさとを単位とした軍隊なので、その隊を裏切ることは、故郷を裏切ることになり、家族に迷惑がかかります。かくして、兵士は故郷と家族の名誉と安全をかけて、戦ったわけです。
アメリカは、命を顧みず無謀とも言える突撃戦を行う日本の軍隊を、クレージーだとばかにしましたが、一方で底知れぬ恐怖を覚えました。
このままでは、日本人は本土決戦も厭わず、そのクレージーな相手を日本本土で戦えば、アメリカ側にとんでもない犠牲者が出る可能性があります。事実、硫黄島の決戦ではアメリカ側に2万人もの犠牲者がでて、その数は日本人兵士の数を上回りました。
アメリカは、日本の軍隊の強さについて、研究を重ねました。
なぜ日本人は決死の戦いを挑むのか? 神風特攻隊など、彼らには理解をはるかに超えた作戦ですが、日本人はなぜそれを行うのか?
そして、アメリカがたどり着いた結論の一つが、日本の軍隊が家族・故郷を単位にしているということでした。
戦争が終了し、日本はGHQの統治下にはいりました。GHQは日本の国の在り方を、根本から変えようとしました。
そしてその最大の目標は、日本の武力を無力化することでした。そのためには、日本の家族制度を解体させる必要があります。
そこで、GHQは、様々な施策を講じます。その一つが憲法の改正であり、法律面から、日本の家族制度を変えることを試みました。
日本国憲法から、「家庭」という言葉を排除したのは、その一つです。
第24条第1項には、「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立」という文言があり、これは世界人権宣言第16条第1項の記載そのままです。
即ち、「成年の男女は、人権、国籍又は宗教によるいかなる制限をも受けることなく、婚姻し、かつ家庭をつくる権利を有する」と書いてあります。
ところが、同じ世界人権宣言第16条第3項の、「家庭は、社会の自然かつ基礎的な集団単位であって、社会及び国の保護を受ける権利を有する。」という記載は、日本国憲法からは、ごそっと抜け落ちています。
つまり、日本国憲法から「家庭」という文言を排除することにより、家庭を守るための法律を制定する根拠を無くしてしまったのです。
事実、1947年12月の民法大改正によって、明治以来続いていた戸籍制度が大きく変わりました。さきほど述べた「戸主」がなくなり、戸籍は夫婦または個人を単位としたのです。名前は「戸」を単位とする「戸籍」というものが残っていますが、実質的に核家族化を促進するものでした。
ここで問題になるのが、天皇家です。天皇家は、為政者がどのように変わろうとも、一貫して存在しています。イギリスには「王は君臨すれども統治せず」という言葉がありますが、日本人の精神的な支柱としての天皇家は、今も昔も変わりません。
日本の伝統文化である「家族」を解体するには、天皇制度の廃止が有効だとして、検討がされました。
しかし、マッカーサーは天皇家の存続を決断します。日本人が天皇家を大切に思う心は非常に強く、この精神的な支柱がくずれれば、日本人は暴徒と化す危険があると考えたからです。
実際、戦争終期にポツダム宣言、即ち無条件降伏を受け入れ、全国民に対する玉音放送を行い、大きな混乱なく戦後の新しい制度に国民が方向転換することができたのは、昭和天皇の存在がなければ、考えられません。
このマッカーサーの決断は、日本にとっては不幸中の幸いでした。
天皇家は、日本の家族制度の頂点にあります。国家の親として天皇が存在するからこそ、国民は家族制度を守り、地域社会を築いてきました。戦前はそれが軍隊に利用されてしまいましたが、それは家族制度が悪いのではありません。むしろ国を発展させるためには、日本の強みとしての家族制度を守っていく必要があると思います。だから、日本という国を発展されるためには、天皇家を大切にするということが、非常に重要です。
日本共産党の綱領には、(二)「戦前、党は、日本国民を無権利状態においてきた天皇制の専制支配を倒し、主権在民、国民の自由と人権をかちとるためにたたかった」、(四)「形を変えて天皇制の存続を認めた天皇条項は、民主主義の徹底に逆行する弱点を残した」などと書いてあり、天皇制を否定しています。この点、日本共産党の考え方は、日本の強みである天皇家を倒すことで、日本を弱体化させるものであり、断じて認めるわけにはいきません。
「家族」は日本の伝統文化です。結婚式は、「両家」のご縁をつくるものだという考え方が残っているし、お盆に先祖をお参りするという習慣も残っています。
天皇家の存在が残る限り、この伝統文化は守られると私は思います。
日本の強みである、家族を中心とした伝統的な文化と、その支柱となる天皇家は、日本が発展するための強みであることを、忘れてはならないと思います。