中国のハニートラップ
今から20年前の2004年の春、上海総領事館員が領事館内で自殺しました。当時、自殺の原因は報道されませんでした。私は当時上海で勤務していましたが、それほど大きな事件とは思っていませんでした。
しかし、それは中国政府によるハニートラップだったのです。
2005年末に、週刊文春が報じたところによると、2003年頃からこの総領事館員はカラオケ店の中国人女性と交際しており、公安から脅され、総領事館が持っている情報を引き出されそうになったようです。彼は杉本信行総領事に遺書を残して、自殺しました。
当時の中国のカラオケは、日本のカラオケボックスとは全く違い、女性のホステスがいて、売春をするような場所です。自殺した領事は、おそらく狙いをつけられて、弱みを握られたに違いありません。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8A%E6%B5%B7%E7%B7%8F%E9%A0%98%E4%BA%8B%E9%A4%A8%E5%93%A1%E8%87%AA%E6%AE%BA%E4%BA%8B%E4%BB%B6
この事件の後に、杉本総領事が書いた本「大地の咆哮」の前書きは、こんな言葉で始まります。
「2004年の春、上海の日本総領事館で、一人の館員が、このままでは国を売らない限り出国できなくなるとの遺書を残して死んだ。私は、そのときの総領事であった。上司として、館長として、彼を守れなかったことへの無念さはいまも変わることはない。」
この事実は、その当時外務省の中で秘匿されていましたが、週刊文春の暴露により、日本の政府も動かざるを得なくなり、領事関係に関するウィーン条約上の接受国の義務違反として、中国を非難するようになりました。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/17/rls_1231a.html
それに対して中国は、言いがかりだとして、日本を非難しています。
http://fukuoka.china-consulate.gov.cn/jpn/xwdt/200601/t20060104_5562379.htm
そもそも、週刊誌に暴露されて初めて中国を非難すること自体が、外務省の隠蔽体質を表していると、櫻井よし子氏は指摘しています。
ハニートラップという、人間の弱みにつけこんで情報を入手しようとする中国のやり方は、許されません。そして、自殺した総領事館員だけではなく、多くの日本人が、これにやられている可能性があります。国内でも起きているのではないでしょうか。
これを取り締まる法律は、日本にはありません。特定秘密保護法では弱いです。特定秘密と指定されない限り、情報は保護されないし、スパイ行為そのものを禁止していないから、ハニートラップ自体を取り締まることはできないのです。スパイ防止法の制定は、日本とって必要なものだと思います。
