不可逆的なダメージ(3)

アビゲイル・シュライアー氏の著書「不可逆的なダメージ」を、なんとか完読しました。最後は出張帰りの飛行機の中でのまとめ読みです。

性的転換治療を行った女子には、後悔する人が少なくありません。そして、成人してから、トランスジェンダーをやめていきます。シュライアー氏が取材したある人は、自分の友人が男性ホルモンの摂取のしすぎで、体がボロボロになっているのを見て、これが正しいはずがないと感じ、性転換治療をやめました。
バック・エンジェルは、有名なトランスジェンダー男子で、57歳の男性(元は女性)です。彼は乳房切除手術を受けているし、男性らしい体作りをするために、トレーニングをするなどの努力をしています。彼は、思春期の女子が性転換治療をすることに対して、強く反対しています。思春期の女子が、一時の思い込みでトランスジェンダーとなるには、犠牲が大きすぎると言うのです。

性同一性障害については、幼少期からそれに悩み、治療として性転換治療を受けるケースは、確かにあります。しかしアメリカで起きていることは、幼少時にはそのような症状は全くない女子が、思春期になってから、SNSやトランスジェンダーのコミュニティー、LGBT活動家たちの宣伝、トランスジェンダー政策を進める学校やセラピスト、医者たちのために、まるで熱病が感染するかのように、トランスジェンダーになろうとしているということです。

これは、米国だけではなく、イギリスやフランスなど欧米で起きていることであり、LGBT理解増進法が成立した日本でも、近い将来起きうることではないかと思います。

シュライアー氏は、本の終わりに、いくつかの提言をしています。その中で私が最も印象的なのは、次の言葉です。
「親としての権威を放棄してはいけない」
親は最後の砦です。思春期の子どもは親に反発するし、親は嫌われるかもしれないけれど、最も大切な局面では、子どもを守らなければなりません。それができるのは、親しかいない、というのです。

私にも思春期の娘がいます。反抗期の真っ只中ですが、娘の成長を願う一人の父親です。この本によれば、シュライアー氏にもお嬢さんがおられるようです。著者は、自分の娘を守りたいという思いもあり、この本を書いたのかもしれません。

一読の価値がある本です。KADOKAWAが翻訳の出版を断念したのは、残念でなりません。ここに書かれたことを、一人でも多くの方に知って頂きたいと思います。他の出版社から翻訳書が出版されることを、願ってやみません。