特定不法行為等被害者特例法

家庭連合の解散命令請求後、財産保全法案が野党から提出されましたが、与党が提出した財産の把握・監視を目的とした特例法案が2023年12月13日に可決され、12月20日に公布、12月30日に施行されました。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/shukyohojin/pdf/93982401_02.pdf

正式名称を「特定不法行為等に係る被害者の迅速かつ円滑な救済に資するための日本司法支援センターの業務の特例並びに宗教法人による財産の処分及び管理の特例に関する法律」と言いますが、報道では「特定不法行為等被害者特例法」と略されており、さらに長いので、以下「特例法」と言います。

特例法の仕組みは、解散命令請求が申し立てられた宗教法人に対し、所轄庁(=文部科学省)が指定宗教法人及び特別指定宗教法人に指定することにより、その財産を把握・監視し、被害者が財産内容を閲覧できるようにすることが、骨子です。
逆に言えば、指定宗教法人及び特別指定宗教法人に指定されなければ、財産が把握・監視されることはありません。
特例法には、「宗教法人による財産の処分及び管理の特例」(第3章)が定められていて、指定宗教法人及び特別指定宗教法人に指定されると、下記の処分が行われます。

①指定宗教法人に指定されると、不動産等の処分の予定が公示される(特例法第10条)
宗教法人の所有物であっても、不動産は私有物です。私有物である限り、処分について制限をかけられるべきではありません。これは憲法29条で規定する私有財産制の大原則です。宗教法人が不動産を処分する際に所轄庁に報告し公示されることは、私有財産制の根本に係ることです。解散命令が決定していないにも関わらず、そのような制限をかけることは、大きな問題があります。

②指定宗教法人に指定されると、財産目録等の報告について、通常の財産目録、収支計算書に貸借対照表が追加され、報告期間を通常の「1年に1回」から「1年に4回」とする(特例法第11条)
通常の運用であれば、取引の安定性を確保するための報告義務と言えますが、過度な報告義務は、私有財産制に国家が介入することとなります。報告の頻度を上げるのは、国家による私有財産監視の目的があり、宗教に対する国家の介入を許容するものです。

③特別宗教法人に指定されると、被害者が財産目録等を閲覧することが可能となる。特例法第13条)
財産目録等のうち財産目録は、株式会社等でも機密事項であり、無闇に第三者に開示されるべきものではありません。閲覧された財産目録等は、悪用されたり、勝手に公開されたりする恐れもあります。これは私有財産性の基本を揺るがす大きな問題です。従い、被害者の特定、閲覧可能となる財産目録等の取り決めは、厳密に行われる必要があります。

以上の通り、特例法には信教の自由に関わる大きな問題があります。従い、指定宗教法人及び特別指定宗教法人の指定、及び特例法第13条に定める被害者の特定には、厳密かつ具体的なルールが求められるのです。