鳥よ翼をかして 日本人妻を返して
この本は、日本人妻自由往来実現運動の会(代表世話人 池田文子氏)が、1976年に発刊した「日本人妻を返して!」を、2023年11月に復刻したものです。
本の内容は、日本人妻が日本の家族にあてた手紙を中心にして構成されています。
1959年より、日朝赤十字間で北朝鮮帰還事業が開始され、これまで93,000人の人々が北朝鮮に渡航しました。その中に、在日朝鮮人男性と結婚した日本人女性が1831名います。渡航した時は、1年もすれば里帰りができる、と言われていましたが、一人の日本人妻も里帰りすることができず、時間が経過しました。
日本人妻自由往来実現運動の会の運動の結果、1997年より一時的に里帰りが実現しましたが、わずか43名が日本の血を踏んだだけで、それ以後は実現していません。
日本人妻たちは、「北朝鮮は金持ちも貧乏人もいない、この世の楽園である」と宣伝され、北朝鮮に渡航しました。しかし実際は食べるもの、着るものが不足し、生活は困窮しました。彼女たちの日本への家族の手紙は、「着るものを送ってくれ」「薬を送ってくれ」「時計を送ってくれ」「日本円を送ってくれ」という、懇願がほとんどです。しかし、物や金を送っても、本人に届くかどうかもわかりません。手紙も、途中でほとんど届かなかったようです。
北朝鮮と言えば、拉致監禁問題が有名ですが、日本人妻の里帰り運動は、その先駆けだろうと思います。日本人妻たちは、年齢的にはほとんどが物故者となってしまった可能性があります。しかし、このようなことがあったことは、日本人としては忘れてはならず、47年ぶりにこの本が復刻されたことは、意味があることだと思います。