牢獄の救世主

毎日新聞の元ワシントン支局長で外交評論家の那須聖氏が、統一教会(当時)創始者の文鮮明師について書いた本です。

文鮮明師は、1984年7月から1985年8月まで、米国コネチカット州ダンベリー刑務所に収監されていましたが、那須氏は1984年9月に文鮮明師と面会し、その時の話も含めて、文鮮明師がいかに米国のために生きてきたか、そして理不尽な理由で有罪判決を受けたことを、1985年1月にレポートしました。

文鮮明師は、アメリカがベトナム戦争の泥沼化で退廃ムードが蔓延し、ソ連による共産主義の侵食が進んでいた1971年に、神の啓示でアメリカに来ました。そこで「アメリカよ、神に帰れ」と訴え、全米クルセードを行うなど共産主義の間違いを訴えました。

キリスト教会から異端とされ、「ムーニー(統一教会)はアメリカの青年を洗脳している」などとメディアからバッシングされました。それは民主党のカーター政権下でピークを迎えていました。

それでも文鮮明師は、保守のレーガン大統領を応援し、当時リベラル紙しかなかったワシントンに保守紙ワシントンタイムズを設立し、アメリカのために働きました。

しかし文鮮明師と統一教会をこころよく思わない人々が国税庁に働きかけ、宗教団体に認められている免税特権は統一教会には認められないとしました。ところが、国税庁職員が調べても、不正が見つかりません。司法省も動いて調べましたが、基礎事由がないとしました。

それでも司法次官補代理安堵ルースは起訴すべきという指示を検事に出します。

アメリカでは、教会の資産を牧師名義の預金とすることが一般的ですが、対象とされたのは文鮮明師の個人名義となっていた預金160万ドルに対し、利息11万2000ドルを申告しなかったというものです。
これは、本来免税特権があるはずのものです。また、いきなり脱税有罪となることはなく、問題があれば修正申告させればよいだけのことです。

被告は判事裁判を求めましたが、検察は陪審員裁判を主張、通常なら有罪にならないようなケースでしたが、一審で有罪判決となりました。控訴審では裁判長は無罪としましたが、残りの二人の判事が有罪、最高裁は審理もせず却下とし、有罪が確定しました。

これに異を唱えたのがキリスト教会で、アメリカで通常認められるべき免税特権が否定されることは宗教に対する迫害であるとして、それまで統一教会に対して批判的であったキリスト教会が団結して、立ち上がりました。アメリカのキリスト教会は、長老派、福音派、メソジスト、モルモン、そしてカトリックと多くの教派があり対立していましたが、それを越えて団結したのです。それは奇跡のようなことでした。

この本が刊行された時、まだ文先生はダンベリー刑務所に収監中でした。

その後、文鮮明師が刑務所を出た後は、統一教会に対する「洗脳」などの中傷はなくなり、却ってキリスト教他多くの宗教がつながり、それが2005年のUPF(Universal Peace Federation)の創立に発展して、今なお世界平和のために活動していることを考えると、感慨深いものがあります。文鮮明師は、これを神の奥妙なる摂理だと言いました。

日本において、家庭連合に対する迫害が行われていますが、文鮮明師が受けた迫害とその結果もたらされたものを考えると、そこに大きな神の計画があるのかもしれません。