日本国史(下)
田中英道氏の日本国史の続きです。
上巻は平安時代までですが、下巻はそれ以降の歴史を振り返っています。武家社会になり、天皇家は実権を失いますが、権威として継続します。江戸時代は、平和が確保され、世界的にも優れた文化が花開きます。
明治維新となり、武家社会から立憲君主制となりますが、それは革命ではなく、統治者が変わっただけで、日本という国家は継続している、というのが田中氏の主張です。
日本にキリスト教が根付かなかったのは、日本の古来の宗教は自然教であり、神の前に自然があったと考えているからだといいます。西洋の、神が自然を作ったという思想は、順序が逆になるわけです。
日本の社会の構成単位に、惣村があるとも言っています。惣村の決定は合議制で、それに反する者は制裁されて居場所がなくなります。「村八分」という決まりが、日本の組織文化の中にあります。
これらの分析は、確かに日本の社会を、よく説明していると思います。
日本社会は、とてもよくまとまった社会です。家庭を大切にし、秩序を重んじる文化は、大切にするべきです。明治天皇が示した五箇条の御誓文には、天皇は国の父母であると書かれていて、その通りと思います。
ただ、それだけでは世界で孤立してしまいます。太平洋戦争という、国民の命と財産を危険にさらす、賭けのような判断をしてしまったのは、為政者が世界の情勢を自分に都合のよいようにとらえ、国民が熱狂してそれを支持して反論を許さなかったからです。
日本の伝統的な文化を尊重しながら、それが世界の中でどのように評価されるのか、客観的な判断力を高めていくことが、日本にとって必要なことだと思います。