供託制度について
家庭連合の田中会長の会見が、家庭連合のホームページに掲載されました。
この中で、供託制度について触れています。将来的な返金要請に対する原資として60~100億円の資金を確保したが、これを移転してしまうのではないかという世論の不安を解消するために、国家が管理できるよう、特別供託金制度をつくることを提案しています。
なぜ現在の供託制度では対応できないのでしょうか。
供託法は、明治32年に施行された、100年以上前の古い制度で、もともと債権が確定している場合に利用する制度だからです。
供託にはいくつかの種類があり、一般的なのは弁済供託と執行供託です。
弁済供託は、債務者が弁済しようとしても債権者が受領拒否したり受領不能の場合に、債務者が債務不履行に陥ることを救済するための制度です。家賃の値上げで家主と借家人がもめていて、家主が値上げを認めないと家賃そのものを受け取らないと言っているような場合、下手をすると借家人が家賃滞納で契約解除される危険があります。そこで、債務者は供託所に従来の金額で家賃を供託することで、契約解除からは免れるというわけです。もちろん家賃をどうするかは、双方できちんと解決する必要があります。
執行供託は、債権者が二人いて債務者の預金をそれぞれ差し押さえて競合した場合、銀行が勝手にどちらか一方に預金を払い戻すと他方が損をするので、供託所に供託して裁判所で按分してもらう、という方法ことになります。
その他にも、保証供託や没収供託などがありますが、これは目的が違うのでここでは除きます。
いずれにしろ、供託制度を使うためには、債権債務が確定している必要があります。しかし、家庭連合が想定する返金請求については、金額が確定していません。文部科学省があげた204億円はすでに解決済のものばかりだし、現在被害弁連が集団交渉している金額も一つ一つ丁寧に吟味すると実質8億円ほどで、今後もどれくらい返金請求が来るものかわからないからです。それでも供託するのであれば、新しい法制度が必要だということで、今回の会見で提案するに至ったのだと思います。
現在の法制度でできること、できないことを、適切に判断した結果であると思います。