解散命令請求の要件としての「民法の不法行為」
家庭連合に対する解散命令請求の法的要件は、宗教法人法第81条第1条第1項の「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」となっています。この「法令に違反」が、刑法だけを指すのか、民法の不法行為も含むのか、一つの論点になっています。
民法の不法行為を含む、と言ったのは、2022年10月19日の参議院予算委員会での岸田首相の下記の答弁です。
「行為の組織性や悪質性、継続性などが明らかになり、宗教法人法の要件に該当すると認められる場合には、民法の不法行為も入り得るという考え方を整理をした次第であります」
https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000272368.html?display=full#lnqfzrz267behuj7rpx
しかし、「民法の不法行為」が本当に解散命令の要件に含まれるのか、専門家の間でも見解が異なるようです。
家庭連合の顧問弁護士の福本弁護士は「含まれない」、信者の地方自治体への訴訟代理人の徳永弁護士は「含まれる」、と言っています。
先日のBSフジの討論でも、元東京地検特捜部検事の高井弁護士は「含まれない」、全国弁連の紀藤弁護士は「含まれる」と言っています。
https://youtu.be/SVP7bAv5z78?si=vwrnpBh2xxh0eOXg
解散命令請求に賛成か反対かの立場に関わらず、意見が割れているのは、信教の自由、権利義務の主体たる法人の消滅という、非常に重い課題だからでしょう。
それだけ、重要かつ今後の司法判断に大きな影響を与える判断が、これから、司法に求められるわけです。
この点について、私なりに整理しました。
「民法の不法行為」とは、民法709条のことで、条文は下記の通りです。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
この条文において、不法行為の成立要件は、下記の6つとされます。
①加害者の故意・過失がある
②権利侵害(違法性)がある
③損害の発生がある
④侵害行為と損害発生との間の因果関係がある
⑤加害者の責任能力がある
⑥違法性阻却事由がない
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8D%E6%B3%95%E8%A1%8C%E7%82%BA
違反性について規定しているのは、②権利の侵害行為についてですが、今回の解散命令請求では、どの部分がそれにあたるのでしょうか。
それは、10月13日の盛山大臣の会見の、下記の部分と思われます。
「多数の方々に対し、自由な意思決定に制限を加え、正常な判断が妨げられる状態で献金や物品の購入をさせて多額の損害をこうむらせ、生活の平穏を妨げた。」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231012/amp/k10014222851000.html
しかし、私も家庭連合の信者として、少なくない金額の献金はしてきましたが、教会から「自由な意思決定に制限を加え、正常な判断が妨げられる状態」にさせられたことはありません。教会から、献金の案内はされましたが、献金するかどうかはあくまで自分の信仰に基づく自由意志です。
家庭連合の解散命令請求の要件としての「法令に違反」が、この献金等に係わる「自由な意思決定への制限」の有無に帰着するのであれば、これはもはや信教の自由に関わることであり、「民法の不法行為」を解散命令請求の要件とするのは不適切であるというのが、私の意見です。
