人さらいからの脱出
家庭連合の信者で医師の小出浩久氏が、ご自身が受けた拉致監禁被害の実態を報告した本です。
1983年に統一教会(当時)の信仰を持った小出氏は、医師として都内の病院に勤務しましたが、1992年に実家に帰省した際に親族によって拉致監禁されました。脱会屋の宮村峻氏が背後にいて、ご両親は宮村氏の指示なくしては何もできない状態になりました。
反対牧師の松村堡智氏が聖書などを基に統一原理の間違いを指摘しますが、その内容に説得力はなく、小出氏は信仰を貫きます。しかし、そのままでは監禁状態から抜け出すことは不可能です。
小出氏は、脱出するには脱会宣言するしかないと決意しますが、今度は他の監禁者への説得や拉致監禁に参加させられました。その挙句に、勤務していた病院に対して未払い賃金をめぐっての調停をさせられます。その病院が統一教会系だという理由です。その時代理人として登場したのが紀藤正樹弁護士と山口広弁護士でした。実際には賃金は支払われているのですが、受け取っていないことにさせられました。
紀藤弁護士、山口弁護士は、小出氏への拉致監禁があったことを認識していました。次のように書かれています。
「山口、紀藤の両弁護士は、こういう打ち合わせの時点で、私が両親の監視下で生活していたのをよく知っていた。また宮村氏の役割も十分にわきまえていたようだ」(P166)
小出氏は、移動中に脱出のチャンスを見つけて、監禁から抜け出しました。そして一心病院への調停を取り下げ、紀藤弁護士と山口弁護士を解任しました。
小出氏は一貫して信仰を貫いていますが、脱出するためとは言え、偽装脱会の過程で他の拉致監禁被害者の説得や拉致監禁の手助けをしたことに、今でも心を痛めています。
これは、拉致監禁グループ(脱会屋、反対牧師、反対弁護士)の手口、役割分担、被害者の心境を正確に記載した、貴重な記録です。小出氏は、先日都内で開催された、拉致被害者シンポジウムでも、登壇していました。拉致監禁の恐ろしさを、一人でも多くの方に知って頂く必要があると思います。